
日常生活にとけ込んでいるウェブ。その発明者として世界的に知られるバーナーズ=リー(Tim Berners-Lee)は6年前,ネット上の情報が今よりも各段に使いやすくなる次世代のウェブ構想を本誌で紹介した。それがセマンティックウェブだ。どんなコンピューターからでも理解できるデータが相互に接続された高度なネットワークのことで,あらゆるパソコンや携帯端末から簡単にアクセスできる。簡単にいえば,コンピューターが人間のようにウェブのコンテンツを読解できる世界の実現につながる。例えば,旅行の飛行機やホテルを自動予約したり,医療記録を自動で更新したり……。私たちが自ら検索をしたり,検索結果をふまえて考えたりすることなく,それぞれの問題に的確な答えを示してくれる。
彼らはこのセマンティックウェブを実現する新技術をいくつか示している。・あらゆる種類のソフトウエアエージェントが理解できるデータ表現にするための共通形式,・異なるデータベースの情報を共通の語彙に変換する「オントロジー」(語彙の意味とそれらの相関関係を表現する定義の集まり),・そのように記述された情報をもとにソフトウエアエージェントが推論するためのルールだ。これらデータ形式とオントロジー,推論ソフトウエアはウェブ上で1つの巨大アプリケーションのように働き,データベースに格納された生データだけでなく,テキストや画像,ビデオ,ウェブ上でのコミュニケーションなど,ウェブに存在するあらゆるデータを解析する。
このセマンティックウェブが普及すれば,形式が異なるデータどうしであってもコンピューターがその“意味”を把握して,ユーザーが求める情報やサービスを提供できる。草の根的に広がりを見せ始めたセマンティックウェブの6年後の現状を報告する。
著者
Lee Feigenbaum / Ivan Herman / Tonya Hongsermeier / Eric Neumann / Susie Stephens
5人はセマンティックウェブ技術に関するプロジェクトにかかわっている。ファイゲンバウムはIBMに勤めていたが,現在はケンブリッジセマンティック社の技術標準担当副社長を務める。ヘルマンはW3Cにおいてセマンティックウェブ活動のリーダーだ。ホングサーメイヤーはパートナー健康科学システムの臨床知識管理と決定支援部門の部門長,ニューマンはクリニカルセマンティックグループコンサルティング社の理事だ。スティーブンズはオラクルの主席製品部門長だったが,最近イーライリリーの主席研究員になった。
原題名
The Semantic Web in Action(SCIENTIFIC AMERICAN December 2007)
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