
世界地図を広げて太平洋北部に目をやると,ハワイ諸島からその北西に位置する天皇海山群にかけて,島や海山が「く」の字型に並んでいるのが見て取れる。これらは,ハワイ島付近に存在する「ホットスポット」が造りだしたものだ。
ホットスポットは地下深くから溶岩を噴き出す“不動の泉”と考えられてきた。地表を覆うプレートが移動するため,その向きに島が並ぶ。ミッドウェー島付近で島の列が大きくカーブしているのは,プレートの移動方向が変わったために違いない。ハワイ諸島や天皇海山群はプレートテクトニクス理論の証拠の1つとなっている。そして,ホットスポットは動かないという前提の上で過去の気候変動や地形の形成過程,極移動などが議論されてきた。
その前提が,今,大きく揺らいでいる。天皇海山群から岩石を採取し,それに残された地磁気を調べたところ,海山が現在のハワイよりも高い緯度で形成されたという結果が得られたのだ。また,新しい海山ほど低緯度で形成されたこともわかった。ホットスポットは南向きに移動していたことになる。
ホットスポットが動くという発見は人々を驚かせたが,これで即,これまでの研究がすべて台無しになったわけではない。ホットスポットが動くメカニズムを解明し,ホットスポットも移動しうるという前提に立ってこれまでの研究を見直すときが来たのだ。
著者
John A. Tarduno
昨年,2億年前の岩石を求めてモーリタニア北東部(サハラ)へ調査旅行に出かけた。古い岩石に記録された地磁気からプレート移動の歴史がわかるからだ。彼はこの旅行で砂嵐に1度しか遭わなかったことに感謝している。また8500万年前の岩石を求めてニュージーランド領チャタム島に出かけ,高さ250mの崖の上に掘削装置を運び上げた。このほか,北極と南アフリカへも出かけた。現在,ロチェスター大学地球環境科学科と物理天文学科の教授であり,同大学の古地磁気学研究所の創設者でもある。
原題名
Hot Spots Unplugged(SCIENTIFIC AMERICAN January 2008)
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