日経サイエンス  2008年2月号

SCIENTIFIC AMERICANが選んだ2007年のベスト50

SCIENTIFIC AMERICAN編集部

 専門家もアマチュアの技術ウォッチャーにとっても,技術を楽観的に見すぎることは常に危険をはらんでいる。人工知能から空飛ぶ自動車まで,期待はずれになったものは少なくない。しかし時折,新技術が最も突飛な予想をも裏切らないことがある。

 

 SCIENTIFIC AMERICANが選んだ「2007年のベスト50」は,イノベーションという言葉が持つ「まったく新しいもの」という本来の意味に肉薄する新しい機械や化学製品の例でいっぱいだ。ある受賞者は,ゼプトリットル,つまり10のマイナス21乗リットルというごく微量の液体を測る器具を作った(アトの1/1000をゼプトということをご存じだったろうか?)

 

 別のイノベーターは,プラグを差し込むことなく携帯電話を充電できる方法を考案した。携帯電話をポケットに入れたまま,自宅のダイニングテーブルにつくだけでよい。天井に仕込まれたコイルから,充電用のエネルギーが送られてくる。さらに別の研究者は,BSEやクールー病など,不可解で致命的なプリオン病の治療に向けた道を開いた。

 

 セロトニン濃度を微調整する抗うつ薬を別にもう1つ付け加えたり,マイクロプロセッサーの速度をさらにもう1段上げたりすることも確かに役には立つ。しかし,ここに紹介する受賞者たちの成果は単にそうしたことだけでなく,人々の健康や家電製品,その他の多くの分野にずっと大きな貢献をする可能性がある。彼らが成し遂げた事柄は決定的に「新しい」のだ。

原題名

The SciAm 50(SCIENTIFIC AMERICAN January 2008)

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