日経サイエンス  2008年1月号

特集:宇宙時代 次の50年

オリオン宇宙船 月へ,その先へ

C. ディンゲル(NASA) W. A. ジョーンズ(ロッキード・マーチン) J. クレーマー=ホワイト(NASA)

 2020年までに人員を地球と月の間で往復させることを目標に,米航空宇宙局(NASA)とロッキード・マーチンは新しい宇宙輸送システムを開発中だ。この「コンステレーション計画」の要となる宇宙船が,加圧カプセルと生命維持装置,推進機関を備えた「オリオン」。このほか,打ち上げ用ロケット「アレスI」「同V」なども開発される。

 

 新計画は1960年代のアポロ計画に似ている部分があるが,月探査以外にも各種の有人・無人ミッションをこなせる設計になる。宇宙ステーション関連の業務や,将来の火星探査などだ。大型化と,より汎用性を高めた設計,それに最先端の技術によって,コンステレーション計画のシステムは高い柔軟性を発揮するようになる。

 

 月ミッションでは,まず月着陸船などの無人部分をアレスVで打ち上げ,これとは別に,4人の宇宙飛行士が乗り込んだオリオン司令船と機械船をアレスIで打ち上げて,軌道上でドッキングさせる。月周回軌道に到着したら,宇宙飛行士は4人とも着陸船に乗り移り,司令船と機械船は無人となって軌道上で待機する。探査を終えると,4人は着陸船の上昇ステージに乗って月面から飛び立ち,軌道上で待っていた司令船と機械船にドッキングし,地球への帰途につく。

 

 帰還地点は米国の陸上または近海を想定しており,着陸地点を調整するために「スキップ再突入」という特殊なプロセスが取られる見込みだ。

 

 しかし読者に全容をつかんでいただくには,オリオン宇宙船のクルーが地球を飛び立つ前,地上から話を始めるのがよいだろう。典型的な月ミッションと,それぞれの段階で使われる技術について,順を追って紹介する。

著者

Charles Dingell / William A. Johns / Julie Kramer White

米航空宇宙局(NASA)とロッキード・マーチンが共同で進めるオリオン計画で工学技術関連業務を統括している。ディンゲルは同計画のNASA側の技術ディレクター。NASA勤務歴25年の彼はスペースシャトルや宇宙帰還機X-38などのプロジェクトで指導的な役職を務めてきた。ジョーンズはオリオン計画の主契約企業ロッキード・マーチンで,クルー・エクスプロレーション・ビークル(CEV)に関するチーフエンジニア兼テクニカルディレクターを務めている。1980年に当時マーチン・マリエッタだった同社で働き始め,セントール・エンジンを使った上段ステージの開発・改良に携わり,これが改良型使い捨てロケット,アトラスVの開発につながった。クレーマー=ホワイトはCEVに関するNASAのチーフエンジニア。彼女はスペースシャトルと宇宙ステーション,X-38計画の技術統括業務で20年以上のキャリアを持つ。

原題名

To the Moon and Beyond(SCIENTIFIC AMERICAN October 2007)

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