日経サイエンス  2008年1月号

特集:宇宙時代 次の50年

特集:宇宙時代 次の50年

S. アシュレー G. マッサー(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 記憶に焼き付けられた出来事というと,悪い意味で忘れられないものが多い。ケネディ大統領暗殺事件,ダイアナ妃の自動車事故死,9.11同時多発テロ……。しかし,ちょうど50年前のスプートニク1号打ち上げ(1957年10月4日)は違った。米国人にとって,核兵器を持つ仮想敵国が人工衛星を自分たちの頭上に打ち上げたのになすすべもないという状況は好ましくはなかったに違いないが,「宇宙時代の幕開け」は希望を感じさせる出来事でもあった。

 

 人々は人類が“揺りかご”からようやく這い出したことを祝い,間もなく通信衛星や気象衛星によって実用面で大きな恩恵を被った。現在活躍している科学者や技術者の多くはかつて,夜空を走る小さな輝点を見上げて心を躍らせた経験があるはずだ。

 

 宇宙計画は今後も劇的進化を続ける。これまでに建造された最も精緻な宇宙飛行マシンであるスペースシャトルは過去のものになる。米航空宇宙局(NASA)はシャトルの後継として「コンステレーションシステム」を計画している。基本的にはアポロ計画で使われたロケットやカプセルの考え方に久々に立ち戻り,それらをハイテク化するものだ。

 

 シャトルは軌道上へ物資を定期的に輸送するという,いささか地味な目標のために作られた野心的な宇宙船だ。これに対しコンステレーションシステムは地味な宇宙船ながら,目標は野心的だ。月面基地の建設,小惑星への飛行,さらには火星への定住まで視野に入れる。

 

 惑星科学も今後数十年で大きく変化するに違いない。太陽系に関する華々しい初期探査が一通り終わったいま,世界の宇宙機関はより詳細で深い探査計画に動き出している。「地球以外に太陽系には生命が存在しないのか」というおそらく最大の疑問には,まだ答えが出ていない。生物など存在しえないと考えられていた天体(木星の衛星や土星の衛星など)も,その内部構造は生き物の生息を許す環境になっている可能性がある。

 

 もし宇宙時代が到来していなかったら,世界はまったく違ったものにとどまっていただろう。過去50年ですべての夢がかなったわけではないが,総じて見れば,可能性はより豊かになっている。しっかり計画を立てて臨めば,50年後の2057年にも「過去半世紀で可能性はより豊かになった」と振り返ることができるはずだ。

原題名

The Future of Space Exploration(SCIENTIFIC AMERICAN October 2007)

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