日経サイエンス  2007年9月号

これぞ立体画像 3Dボルメトリック・ディスプレー

S. F. ブラウン(科学ライター)

 特殊眼鏡なしに立体画像を見られる待望の装置が登場した。映し出した画像を操作するといった対話型の処理も可能。医療分野などに利用が進みそうだ。

 

 生き生きした立体画像を映し出して,ユーザーがそれを操作できる──そんな装置を作ろうと,発明家たちはずっと苦闘してきた。しかし従来の立体画像装置には画像がチラつく,視野が狭い,特殊な眼鏡が必要といった欠点があり,思うようにはいかない。

 

 ところが最近,こうした欠点を克服した新装置が2つのメーカーによって開発された。アクチュアリティーシステムズ社の「パースペクタ(Perspecta)」と,ライトスペース・テクノロジーズ社による「デプスキューブ(DepthCube)」だ。それぞれ独自技術にテキサス・インスツルメンツのデジタル光プロセッサーチップなどの既製部品を組み合わせ,双方向・対話型の立体画像システムを作り上げた。これら「3Dボルメトリック・ディスプレー」はまさに“立体画像”と呼ぶにふさわしく,研究室から商品化モデルへと移行しつつある。

 

 アクチュアリティー社はがんの放射線治療分野に狙いを定め,「パースペクタ・ラッド」を開発した。フィリップス・メディカルシステムズ製の放射線治療装置に付加して使う。医師がボタンを押すと,例えば脳腫瘍のCTデータが立体画像となって現れる。別のボタンを押すと,放射線医が設定したビーム経路が立体画像に重ねて表示される。外科医はこれを見て,ビームが脳腫瘍のどの部分に当たるのか,正常組織のどこを透過するのかなどを,厳密に確認できる。ビーム経路を調整して,治療効果を高めたり正常組織の損傷を抑えたりできるだろう。1号機は約9万ドル。生産量が増えれば6万5000ドルに下がるという。

 

 ライトスペース社はこれまでに,米空軍研究所や北海道大学などの研究機関に合計で数台のデプスキューブを販売した。価格は1台約5万ドル。約5000ドルまで下がる可能性があるとみている。

 

 これら新興企業2社が開発した製品は科学者たちの強い関心を呼んでおり,多くの用途が開けるだろう。

著者

Stuart F. Brown

科学ライター。以前はPopular Science誌とFortune誌の記者を務めていた。現在の取材範囲は航空宇宙や輸送,バイオテクノロジーなど,「人間が作った世界全般」だという。

原題名

Seeing Triple(SCIENTIFIC AMERICAN June 2007)

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