
湯川秀樹と朝永振一郎。同時期に東京で生を受け,父親の京都大学への赴任により,ともに幼くして京都に移る。そこで少年時代を過ごし京都大学で学んだ。間違いなく2人はあらゆる面で素晴らしいライバルだった。2人は多くの論文や随筆を著し,さまざまな分野の人々と対話した。彼らの仕事はそれぞれ十数巻からなる著作集にまとめられている。2人の人生と業績,彼らが残したものが現在にどう受け継がれているのか考えてみたい。
20世紀は物理学にとってまさに革命的な時代となった。湯川・朝永の少年時代にアインシュタインの一般相対性理論が,高校時代に量子力学が誕生した。この両理論によって,人類は超ミクロの世界から超マクロの世界まで実に10の60乗という広い範囲にわたって自然界の姿を知ることができるようになった。
湯川・朝永が大学に入る1920年代後半になると,革命は一段落したかのようだったが,いくつもの重要な問題が未解決のまま残されていた。その1つは,原子核の構造の問題であり,強い力と弱い力の性質にまつわるものだった。量子場の理論が内包する数学的構造にも避けられない困難が残されていた。
現在の私たちの立場から見れば,75年前の人々が物質を構成する基本粒子,いわゆる素粒子は電子と陽子だけだと考えていたことは奇妙にも思われる。
当時の彼らは自然界を構成する基本粒子の種類は少なければ少ないほどよいと考えており,理想的には基本粒子は1種類しか存在しないことが望ましいとされていた。例えばディラックは中性子の存在を認めざるを得なくなったとき,「基本粒子といっても,すでに2種類あるのだから,3種類になってもよいだろう」と理由付けしている。
著者
南部 陽一郎(なんぶ・よういちろう)
シカゴ大学名誉教授。自発的対称性の破れや,カラーによる強い力の解釈,ひも理論など素粒子理論分野でいくつもの重要な概念を提唱した。ウォルフ賞,ディラック・メダル,文化勲章などを受ける。
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