日経サイエンス  2007年2月号

CGを飛躍させる光のマジック

W. W. ギブズ(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 スペース・インベーダーの白黒画面と対峙して青春を無駄に費やしてきた私たちの世代が今日のコンピューターゲームを見ると,あまりの違いに呆然としてしまう。稚拙なピクセル画で描かれていたサルの「ドンキー・コング」も,驚くほど緻密な3次元のキング・コングに進化した。家庭用ゲーム機Xbox 360のソフトに出てくる主人公の中には,2万個を超えるポリゴン(多角形)による複雑なメッシュで構成されているものもあり,それぞれ微妙な質感や陰影,光沢があって,1秒間に何十回も書き換えられている。

 

 コンピューターグラフィックス(CG)の進化よって,ゲームだけでなく,設計や工学,建築,医療画像,科学映像など各種ソフトの性能はぐっと高度になった。これは立体的な像を平面フレームに超高速変換する「グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)」の高性能化によるところが大きい。

 

 とはいえ,対話型ソフトに登場するCGと実写映像や写真との隔たりはまだ大きい。一部の専門家によると,パソコン画面に現実世界の微妙な色合いや滑らかな動きを表現するには,立体モデルの描画法を根本的に変えるしか道がないという。

 

 現在のGPUが採用している「ラスターグラフィックス」という描画法から,より科学的に厳密な「レイトレーシング(光線追跡法)」への転換が求められている。レイトレーシングはこれまで長い間,対話型ソフトに登場する変化の素早い場面を描くのには使えないとされてきた。しかし,最近のハードとソフトの進歩によって,一般のパソコンでもレイトレーシングを利用できそうになってきた。

原題名

A Great Leap in Graphics(SCIENTIFIC AMERICAN August 2006)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

グローバルイルミネーション大域照明kDツリーレイ・プロセッシング・ユニットRPU