日経サイエンス  2006年12月号

特集:エネルギーの未来

離陸する再生可能エネルギー

クリーンパワー

D. M. カメン(カリフォルニア大学バークレー校)

 温暖化ガスを大幅に削減しようとするなら,エネルギー効率の向上だけに頼っていては成功は期待できない。経済成長は新しい工場の建設を促し,人々が新たにマイカーや住宅をもてるようにする。これらはすべてエネルギー需要の拡大を意味する。これではエネルギー効率の高い車や建物,電気製品を導入したところで,二酸化炭素(CO2)排出量は増え続けるだろう。地球温暖化を抑えるには,再生可能エネルギーの技術開発に本腰を入れなければならない。

 

 再生可能エネルギーが注目を集めたことは過去にもある。1970年代のいわゆるオイルショックのときだ。このときは一過性のブームに終わってしまい,人々の関心も政治的なサポートも長続きしなかった。しかし近年,太陽電池や風力発電,バイオマス燃料(エタノールなど植物由来の燃料)の性能は飛躍的に向上した。値段も比較的手ごろになり,普及への道を開いている。再生可能エネルギーのメリットは環境面だけではない。輸入化石燃料への依存度を下げることで,エネルギー確保の安定性を高めることにもつながる。石油や天然ガスの価格は,高いだけでなく,変動も激しい。これが再生可能な代替エネルギーの魅力を高めることにもつながっている。

 

 現在ほど再生可能エネルギーが求められている時代はない。これからの数十年間はクリーンエネルギーを推進する絶好の期間となるだろう。クリーンエネルギーへの移行を促すには,政治家と市民のそれぞれが実際に汗を流す必要がある。科学的,経済的,政治的な人材や費用などを長期にわたって投入し続けることも不可欠だ。

著者

Daniel M. Kammen

カリフォルニア大学バークレー校の教授(Class of 1935 Distinguished Professor of Energy)。同校のエネルギー資源グループ,ゴールドマン公共政策大学院,原子力工学科に勤めている。再生可能・適正エネルギー研究所の設立者・所長で,バークレー環境研究所の共同所長。

原題名

The Rise of Renewable Energy(SCIENTIFIC AMERICAN September 2006)

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