日経サイエンス  2006年12月号

特集:エネルギーの未来

暮らしから考える

効率向上

E. K. ヨーヘム(スイス連邦工科大学)

 エネルギー利用効率の向上は大気への温暖化ガス排出の削減策として大きな可能性を秘めているにもかかわらず,原子力や水素,再生可能エネルギーといった,派手な代替エネルギーに比べるとほとんど注目されない。だが,包括的なエネルギー効率向上の戦略が策定できれば,最も手っ取り早く,安上がりに二酸化炭素(CO2)排出量を減らせる。収益性を確保しながら,驚くほどの効果も上げられる。

 

 エネルギー効率の向上は,石油などの「一次エネルギー」を電気などの「エネルギー担体」に,さらには家庭で使うトースターの熱のような「実用エネルギー」に転換するまで,エネルギーチェーン(エネルギーの流れ)のすべての段階で実現できる。

 

 気候変動の影響や,予想されるエネルギー価格の高騰を考慮するなら,エネルギーチェーンのいたるところで起こるエネルギー損失は改善の好機ともとらえられる。カギとなるのはエネルギー効率だ。エネルギーと材料が大量に使われている現状を変える,新しい技術と手法が必要だ。

著者

Eberhard K. Jochem

チューリヒにあるスイス連邦工科大学(ETH)の経済学・エネルギー経済学教授,およびエネルギー政策・経済学センター所長。アーヘン工科大学とミュンヘン工科大学で化学工学や経済学を学び,1971~1972年にハーバード大学公衆衛生学部で博士研究員を務めたのち,ドイツのフラウンホーファー・システム・イノベーション研究所でエネルギーと材料効率の研究に着手。数誌の科学雑誌やEncyclopedia of Energy誌の編集委員を務める。スイス・エンジニアリング科学アカデミー会員。

原題名

An Efficient Solution(SCIENTIFIC AMERICAN September 2006)

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