
この世界を住むに耐える状態に保っていくには,人類はマラソンにも似た長丁場の技術変革を達成しなければならない。そのゴールラインははるか遠くにあり,プリンストン大学のソコロウ(Robert H. Socolow)とパカラ(Stephen W. Pacala)はこの難事業を多世代にわたるリレー競技にたとえている。
彼らは,過去1世紀ずっと増え続けてきた二酸化炭素(CO2)の排出に歯止めをかけて最初の50年区間を勝ち抜くための戦略を述べた。既存技術を賢くかつ適切に使えば,世界経済を害することなく最初の区間を完走できるだろう。これが健全な「プランA」だ。
しかし,このプランは絶対確実というにはほど遠い。成否は,社会がさまざまな取り組みを実行して“7ウェッジ”の排出削減を達成できるかどうかにかかっている(1ウェッジは250億トンの炭素を地上にとどめ,大気中に放出しないこと)。スタートで出遅れたり早々に伸び悩んだりしては,コースを外れてしまうだろう。また,温暖化ガス排出を安定化するには2056年までに最大18ウェッジの削減が必要になるとみる科学者もいる。
「プランA」が成功し,いま10代の若者たちが第1区間を走り抜いて定年を迎えたとしても,勝利はまだ半分でしかない。バトンは2056年に次の世代に渡され,レースはさらに困難な後半に入る。CO2排出ペースを2106年までに半減するという困難なレースだ。
つまり,遅かれ早かれ「プランB」が必要になる。革新的な技術を組み合わせ,1トンのCO2も出さずに10~30兆ワットのエネルギーを供給する計画に挑戦しなくてはならない。エネルギーの専門家たちは1960年代から,突飛なアイデアをあれこれ議論してきた。いまや,真剣に考える時期だ。
以下では,核融合などいくつかの技術を評価した。確実なものは1つもない。しかし,これらから人類の文明を引っ張る新たなエンジンが生まれてくるかもしれない。
原題名
Plan B for Energy(SCIENTIFIC AMERICAN September 2006)
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