日経サイエンス  2006年10月号

ハッブル望遠鏡 発見ベストテン

M. リヴィオ(宇宙望遠鏡科学研究所)

 今年4月,ハッブル宇宙望遠鏡は16歳の誕生日を宇宙で迎えた。この間,天文学者は宇宙についてかつてない詳細な現象を見てきたし,世界中の人々も宇宙の驚異を垣間見ることができた。しかし,ハッブルの将来をめぐる最近の議論は,そうした功績に影を落としている。米航空宇宙局(NASA)の奮闘によってスペースシャトルの打ち上げは再開されたものの,ハッブルの劣化は続いており,宇宙飛行士を派遣して修理・調整しなければ2008年半ばにも耐用期限に達してしまう。

 

 この大きな岐路を迎え,私はハッブルの,ひいては天文学の黄金期とされる過去15年間を評価することにした。ここで紹介するのは,私が選んだハッブル功績トップテンだ。惑星のように小さな天体から,銀河や宇宙全体に関する発見まで,多岐にわたる。選定は私の独断によるが,そもそも1つの記事でハッブルの功績すべてを公平に評価するのは非常に難しい。

 

 驚くべき発見はなおも続いている。昨年も他の天文台と共同で,冥王星の衛星を新たに2つ見つけたほか,非常に初期の宇宙に予想外に(つまり理論とは裏腹に)大質量の銀河が存在したことを突き止め,惑星質量の伴星を従えた褐色矮星を発見した。

 

 かつては想像するしかなかった宇宙の姿を人類史上初めて見られるようになった時代に生きていることを,私たちは幸運に思うべきだ。

著者

Mario Livio

暗黒エネルギーや超新星爆発,太陽系外惑星,コンパクト天体への物質降着など,多岐にわたる研究を行っている。現在はボルティモアにある宇宙望遠鏡科学研究所に所属。最近の著書『The Equation That Couldn’t Be Solved』では,結婚相手の選択から物理法則までさまざまな物事に見られる「対称性」とその役割について論じている。余暇は美術館のカタログで埋め尽くされた書斎でアマチュア美術史家として過ごす。

原題名

Hubble's Top 10(SCIENTIFIC AMERICAN July 2006)

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