日経サイエンス  2006年10月号

CSI効果 テレビドラマが捜査を変える

M. M. ハウク(ウエストバージニア大学)

 エドガー・アラン・ポーのデュパン探偵シリーズやコナン・ドイルのシャーロック・ホームズなどの推理小説,そしてジャック・クラグマンが主役を演じたテレビドラマ『ドクター刑事クインシー』〔訳注:1976年から83年まで米国NBCで放送された。原題は“Quincy,M.E.”(検死官クインシー)〕,あるいは現在人気の科学捜査ドラマなどのテレビ番組では,科学捜査がストーリーの中心となっている。

 

 シャーロック・ホームズは,物的証拠から犯罪者を割り出すために現在実際に使われている多くのテクニック(例えば血液検査など)の先駆けとなる方法をすでに使っていた。科学捜査という仕事が正式に生まれたのは1900年代前半のことだが,90年代にDNA鑑定が行われるようになると,一般の人の間にも科学捜査に対する認識が急速に広まった。

 

 現在,科学捜査の人気はこれまでになく高まっている。昨年10月にはテレビドラマ視聴率トップ20に,『CSI:科学捜査班』シリーズのドラマ合計8本がランク入りした。同月のある木曜日,全米でついていたテレビの27%は『CSI』にチャンネルを合わせていたという。

 

 こうした番組を見ている視聴者は,科学捜査班には十分な数の熟練した捜査官がいて,最先端の機器がすべてそろっており,これら豊富な人材と資源によってすべてのケースがてきぱきと処理されていると思うようになる。

 

 しかし,一般の認識と現実とのギャップは大きい。そのため,捜査への不満の声が聞かれるようになっている。弁護士や裁判官の中には,2000年から放送されている『CSI』の影響で,陪審員たちが非現実的なレベルの物的証拠を要求するようになっていると感じている人もいる。

著者

Max M. Houck

ウエストバージニア大学の法科学イニシアティブ(法科学研究と法科学者の専門教育を開発するプログラム)の責任者。物的証拠の専門家で,法人類学者でもあり,1992年から2001年にかけてFBI研究所の物証部門で働いた。ミシガン州立大学で人類学学士号と法人類学修士号を取得。法科学教育プログラム認可委員会の委員長で,Journal of Forensic Sciences誌とJournal of Forensic Identification誌の編集委員も務める。米国法科学アカデミーフェローで米国犯罪研究所長協会と国際身元確認協会の準会員。

原題名

CSI: The Reality(SCIENTIFIC AMERICAN July 2006)

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