日経サイエンス  2006年8月号

恐竜の巨大化と哺乳類の進化

坂元志歩(科学ライター)

 体長30mを超える史上最大級の恐竜「スーパーサウルス」。その骨の中に秘められたシステムの存在が,恐竜の巨大化を支えたらしい。恐竜たちの陰で哺乳類も大きな進化を遂げた。

 

 スーパーサウルスは今から約1億5000万年前に生きていた植物食恐竜。成体の体長は33~40mに及んだ。体長40cm程度で生まれたものが,性成熟を迎える10年後には50倍の20mに達したと。この驚異的な成長は,化石骨を薄くスライスして成長線を調べた結果,明らかになった。この成長速度は鳥類や,私たちをはじめとする哺乳類に匹敵する。

 

 恐竜が巨大化できたのはなぜか。今も大きな謎だが,いくつかの理由が考えられている。

 

 スーパーサウルスの肋骨を切断すると,断面に“穴”が見える。「含気骨」の証拠だ。含気骨は「気嚢(きのう)システム」という仕組みを持つ動物にだけ見られるとされる。現代では鳥だけがこのシステムを持ち,効率よく酸素を取り込んでいる。スーパーサウルスなどの竜脚類やアロサウルスのような獣脚類でも,含気骨に相当するものが見つかっている。

 

 地球はペルム紀と三畳紀の境界に低酸素状態に陥ったが,そこから白亜紀後期に向けては大気中の酸素濃度は上昇していった。三畳紀に出現した竜脚類などの恐竜は鳥と同様の気嚢システムを使うことで酸素を効率よく取り入れて低酸素時代を生き延び,酸素が豊富になってからは余ったエネルギーを巨大化へ利用したと考えられる。他にも胴体からの脚の出方や,食べ物との関係などが考えられている。複数の要因が絡み合い,超巨大な生物が誕生したのだろう。

 

 一方,恐竜と同時期に登場した哺乳類は,恐竜の活動が鈍る「夜の世界」に進出して生き延びた。聴覚などの感覚と,それを統合する脳が発達したのはこのためだと考えられる。

著者

坂元志歩(さかもと・しほ)

科学ライター。物質と生き物のつながり,進化などに興味を持っている。

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