
米国のガソリン価格が1リットル当たり80セントまで跳ね上がった昨年の夏,ハイブリッド車はショールームから市場へ向かって次々に走り始めた。ハイブリッド車は従来のエンジンと電池駆動の電気モーターを組み合わせて,低燃費と高性能を実現した車だ。平均的な米国製自動車は1ガロンで23マイル(1リットルで約10km)走るが,トヨタの自動車「プリウス」といったフルハイブリッド車なら約2倍も燃費がよい(この燃費は運転の仕方による/本誌90ページ囲み参照)。米国におけるハイブリッド車の年間販売台数は2005年に20万台と前年比で倍増し,2010年までに年間50万台以上に拡大すると予想されている。2020年までには,ほとんどの新車でハイブリッドタイプが選べるようになるはずだ。
それまでに,「充電式ハイブリッド」と呼ばれる新技術が登場するだろう。いままで以上の低燃費に加え,コンセントにつなぐだけで充電可能な車になる。自宅や職場のコンセントにプラグを差し込めば充電でき,給油所には年に数回立ち寄るほどですむ。さらに,余った電力を電力会社に売ることだってできるようになるかもしれない。
充電式ハイブリッド車は消費者側のメリットにとどまらない。何百万台もの自動車から吐き出される排気を,発電所に集約することによって,温暖化ガスの排出削減にも役立つのだ。現在,米国では石炭や天然ガスを燃やして発電しているが,将来的には風力や太陽光などのクリーンなエネルギー源で電気を生み出せるようになるだろう。また,化石燃料を燃やして発電しつつ,回収したCO2(二酸化炭素)を地中に埋設してしまう進んだシステムも考えられる。
燃料費の上昇傾向と気候変動の懸念が続けば,2020年頃には市場が大幅に変化し,ほとんどの車種でハイブリッド車が揃うだろう。その後,充電式ハイブリッド車が代替燃料自動車の主流になるはずだ。
著者
Joseph J. Romm / Andrew A. Frank
2人はハイブリッド車の技術を採用するよう長年訴え続けてきた。ロムはマサチューセッツ工科大学で物理学博士号を取得し,クリーンエネルギーのコンサルティング会社キャピタルEの代表を務めている。最新の著書は『水素は石油に代われるか』(2005年,オーム社)。1990年代後半,米国エネルギー省次官補として先端エネルギー技術の開発および応用に携わった。フランクは南カリフォルニア大学でPh.D.を取得,ウィスコンシン大学マディソン校で電気工学教授職を18年間務め,現在はカリフォルニア大学デービス校で力学および航空工学の教授。充電式も含めた先端ハイブリッド車の技術に関心を寄せている。
原題名
Hybrid Vehicles Gain Traction(SCIENTIFIC AMERICAN April 2006)
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