日経サイエンス  2006年4月号

離陸するか?動物医薬品工場

G. スティックス(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 タンパク質はバイオテクノロジーの主役だ。バイオ産業は30年におよぶその歴史のほぼすべてを通し,この原材料の安定した供給源を見つけるのに苦労している。これまで多くの企業はハムスターの卵巣細胞などで作られる大きな分子のタンパク質を最大限使ってきた。1990年代後半,タンパク質から作る新しい医薬品,モノクローナル抗体が登場し,最近では需要が供給を上回る状態が続く。赤血球の産生を促す組み換えエリスロポエチンやガンを攻撃するモノクローナル抗体を開発した科学者たちは,過去20年にわたり,これまでの方法に代わる製造方法を探し求めてきた。

 

 新しい形のタンパク質製造工場ともいえる“遺伝子組み換え動物”は,治療用タンパク質を作って乳の中に分泌する。この動物たちがついに活躍する時がきたようだ。欧州医薬品審査庁(EMEA)は早ければ今年にも,ヤギが作ったタンパク質を,遺伝的に血液が固まりにくい患者の治療用抗凝血剤として承認する見通しだ。もしこのATrynという医薬品が最終的に承認されれば,マサチューセッツ州フレーミンガムにあるGTCバイオセラピューティクス社(バイオテクノロジーの大企業ジェンザイム社から分割されて子会社となった)が費やしてきた15年の開発に終止符が打たれるだろう。

原題名

The Land of Milk & Money(SCIENTIFIC AMERICAN November 2005)

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