日経サイエンス  2006年4月号

マラリア撲滅への挑戦

C. P. デュナバン(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)

 世界のほとんどの地域ではマラリアは制圧され,先進国にとっては過去の感染症となりつつある。しかし,サハラ砂漠以南のアフリカでは依然としてマラリアによる死亡率が高く,年間100万~200万人が犠牲になっている。命を取りとめても心身に後遺症を負う人が多いため,エイズとともにアフリカの経済発展を妨げる大きな要因になっている。

 

 マラリアの予防にはワクチン開発が待たれるが,今のところ有効なワクチンは開発されていない。マラリアの原因となる寄生虫マラリア原虫とこれを媒介するハマダラカの複雑なライフサイクルが,ワクチン開発を難しくしている。

 

 だが,既存の方法でもマラリア感染を予防することは不可能ではない。アフリカの一部地域では殺虫剤処理した蚊帳(かや)と抗マラリア薬の使用によって,5歳未満の子どもの死亡率が半減したというデータもある。

 

 こうした対策を妨げているのは資金難だ。マラリアが流行している地域はGDP(国民総生産)の伸びがきわめて低いうえ,少ない公衆衛生予算をエイズと取り合うような格好になっている。世界がこうした問題に真剣に取り組まない限り,アフリカのマラリア被害を食い止めることは難しいだろう。

著者

Claire Panosian Dunavan

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のデイビッド・ゲフィン医学校の熱帯医学の専門家。最近発刊された医学研究所報告『Saving Lives, Buying Time: Economics of Malaria Drugs in an Age of Resistance(命を救い,時間を手に:耐性の時代におけるマラリア薬の経済学)』の編者の1人。スタンフォード大学,ノースウエスタン大学医学部,ロンドン大学衛生熱帯医学科で学んだ。教官としても臨床医としても熱心で,医療ジャーナリストとしてのキャリアもすでに20年におよぶ。

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