日経サイエンス  2006年4月号

あなたのゲノム 解読します

G. M. チャーチ(ハーバード大学)

 1990年から2005年の間に30億ドルの予算を投じたヒトゲノム計画では,解読が最も容易な部分(全体の93%)を予定よりも2~3年早く読み取ることができ,解読に必要な技術や方法を遺産として残した。そうした技術はその後もさらに改良が進み,今日では約2000万ドル程度で,実用に耐えられる精度でのゲノム解読が可能になった。それでもなお,この金額では大規模な塩基配列解読ができるのは,専門の解読センターか,巨額の予算を得た大きな研究プロジェクトに限られる。

 

 ゲノム解読を安価にできるようになることを,期待をこめて「1000ドルゲノム」という言い方で表している。その夢が現実になったら,一生にいっぺん,ちょっと大きな出費を覚悟すれば,自分自身の全ゲノムを読み取ってディスクなどに書き込んでもらい,それをいつでも医療に役立てられるというわけだ。

 

 また配列決定のコストが下がれば,ゲノム情報の価値も上がってくるだろう。たくさんの研究者がゲノムを調べられるようになるし,扱えるゲノムの数も多くなる。たとえば病気の人々と健康な人たちのゲノムを比べてその違いを知るといった研究が,今よりもずっと盛んになるはずだ。

 

米国立衛生研究所(NIH)が資金援助している「革新的ゲノム配列決定技術」のための2つのプログラムは,2009年までにヒトゲノム解読1人分で10万ドル,そしてそれを2014年までに1000ドルにすることを目標としている。

 

 プログラムの進み具合に関する調査では,2009年には2万ドルでヒトゲノムが読めるようになるという見通しが出された。また,「1000ドルゲノム」が実現し,個人のゲノム情報が利用できるようになった場合に考慮すべき問題点についても光があてられた。

著者

George M. Church

ハーバード大学医学部教授であり,ハーバード・リッパー計算遺伝学センター,米国エネルギー省ゲノム技術研究所,米国立衛生研究所ゲノム科学センターズ・オブ・エクセレンスの所長を務めている。研究対象は分子生物学と細胞の分析と合成にまたがり,これらを統合するような成果をあげている。米国で10件の特許を取得し,20以上の会社の科学顧問を務めてきた。

原題名

Genomes for All(SCIENTIFIC AMERICAN January 2006)

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