日経サイエンス  2006年2月号

原始の地球はすぐ冷えた?

J. W. バレー(ウィスコンシン大学マディソン校)

 地球は45億年前に灼熱状態で誕生し,ゆっくりと冷えて,およそ38億年前までにより住み心地のよい気候に変化した──というのがこれまでの定説だが,実は間違いかもしれない。

 

 ジルコンという鉱物の小さな結晶を調べた結果,太古の地球の状況について新たな事柄がわかった。それによると,地球はずっと早く,おそらく44億年前には十分に冷えていたと考えられる。これら原始のジルコンには,低温で湿潤な環境の存在を示す化学組成を残しているものがある。生命の進化に必要な環境がすでに整っていたのかもしれない。

 

 ここ5年間で,初期地球に関する従来の考えを一新させる発見があった。非常に古い年代にできた「ジルコン」という鉱物の結晶が多数見つかり,私たちウィスコンシン大学マディソン校のグループをはじめとする地質学者がその化学組成を分析した。この鉱物は異常なまでに頑丈で,それらが形成された時の環境を示す手がかりを驚くほどしっかりと保っている。

 

 最も古いものはオーストラリアのジャックヒルズで見つかったジルコンで,44億年前にまでさかのぼる。酸素16に対する酸素18の比を測定した結果から,当時の地球表層に低温の環境と液体の水が存在したと考えられる。おそらく完全な海洋がすでにできていて,地球初期の気候は火の玉地獄ではなく,サウナに近かったろう。

 

 また,ジルコンが結晶化する際に内部に取り込んだ包有物を調べたところ,石英が見つかった。石英は花崗岩に含まれることが多く,花崗岩は進化の進んだ大陸地殻によく見られる。このほか,微量元素の分析や,ジルコン粒子の分布状況などから,これらのジルコンは大陸塊で生まれたものだと推定される。

著者

John W. Valley

ミシガン大学アナーバー校で学ぶ間に初期地球に興味を抱き,1980年にPh. D.を取得した。以来,学生とともに北米や西オーストラリア,グリーンランド,スコットランドで太古の岩石を調べ続けている。現在はウィスコンシン大学マディソン校のチャールズ R. ヴァン・ハイズ地質学教授であり,アメリカ鉱物学会の会長を務める。ウィスコンシン大学で彼は「WiscSIMS」という数百万ドル規模の研究室を設立した。ここに導入された新型イオンマイクロプローブCAMECA IMS1280は,実に多様な最先端の研究に役立つ。ジルコンのほか,隕石からガン細胞までを対象に,さまざまな希少物質や微量物質を分析する計画だ。

原題名

A Cool Early Earth?(SCIENTIFIC AMERICAN October 2005)

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