日経サイエンスは1月号掲載の「SCIENTIFIC AMERICANが選んだ2005年のベスト50」のなかでソウル大学の黄禹錫(ファン・ウソク)教授を最優秀研究リーダーとして選出した部分を削除します。黄教授らの研究成果が捏造であった事実が判明し,SCIENTIFIC AMERICANは黄教授の最優秀研究リーダーへの選出を取り下げました。
SCIENTIFIC AMERICANは12月15日,自社のウェブサイトに概略以下のような記事を掲げて経緯を説明しています。
非常に残念ながら,SCIENTIFIC AMERICAN編集部は
2005年の最優秀研究リーダーに黄禹錫教授を選出したことをただちに撤回します。
黄教授らソウル大学のチームは11人の患者のクローン胚から幹細胞を得たと2004年6月のScience誌に発表したことで知られます。しかしながら今朝の報道によると,「この論文の大部分が捏造であることを黄教授が認めた」と論文の共著者の1人である廬聖一(ノ・ソンイル)博士が語っています。廬博士は黄教授に対し,Science誌掲載の論文を取り下げるよう強く求めました。
この告白に先立つ数週間の間に,黄教授の研究室で行われた実験の一部が倫理的基準を十分に満たしていなかったことが判明しました。実験に卵子を提供した数人の女性に金銭が支払われていたほか,一部の卵子は研究室で働く女性研究員が提供したものでした。
私たちSCIENTIFIC AMERICAN編集部は,この疑惑が非常に気がかりではありましたが,真相がはっきりするまでは証拠不十分として黄教授の立場を尊重することが重要だと考えました。疑惑がはっきりした後も,この分野の科学研究に関する倫理的側面にはいくぶんの曖昧さがあると考え,彼をすぐに断罪することは避けました。
しかしながら,今回の科学上の不正は研究活動に対する許すことのできない犯罪であり,今回のケースについては,黄教授を「SCIENTIFIC AMERICANが選んだベスト50」に含めることを完全に無効とするものです。
黄教授はSCIENTIFIC AMERICANだけでなく,世界の科学界を欺きました。私たちは彼の仕事を誌面で紹介したこと,他の重要な技術リーダーとともに称揚したこと,そして図らずも読者の皆さんに彼の業績について誤った情報を提供する結果になったことを遺憾に思います。そしてまた,黄教授の捏造によって幹細胞研究そのものの評判が傷つくことを深く懸念してもいます。幹細胞研究は一般に,はるかに誠実で倫理的にも優れた科学者たちによって進められており,非常に価値の高い研究であると,私たちは考え続けています。