日経サイエンス  2005年12月号

特集:地球の未来

日本が歩むべき道 京都議定書からの出発

対談

西岡秀三(国立環境研究所理事) 大塚啓二郎(国際開発高等教育機構)

編集部 特集『大選択 地球の未来』では,限りある存在である地球の姿が明らかになった現在,環境と共生可能な社会システムとは何か,各分野の専門家が解説しています。この特集から,今後日本が何をすべきかを考えていきたいと思います。

 
 

 西岡 特集を通して,全体に非常に楽観的ですね。目標とすべきシステムは明確に示されていて興味深いのですが,それを実現する次のステップに進むために,現在の社会システムのどこを変えていかなければならないか,もう少し具体的に考えていかなければなりません。実際,それが現在私たちが抱えている問題でもあるからです。

 

 

 

 

 

大塚 そうですね。現実に社会システムを変革していくためには,この特集に出てくるような各論だけではうまく機能できない。もっとシステムの全体像を語る必要があります。
 また,プロローグ(「ボトルネックを超えて」)で,現状はボトルネック状態にあると述べていますが,現状を超えるシステム作りを語る際に重要な,京都議定書の位置づけにあまり触れられていませんね。専門家である西岡さんはどうお考えですか。

 

 

 

 

西岡 京都議定書は,第一約束期間の2008年~2012年という具体的なゴールに向かって,温暖化ガスを目標通り削減するために何をすべきかを示しています。経済的メカニズムにあまり踏み込んでいないなど不十分な点はありますが,温暖化対策のロードマップとしては非常に優れたものです。
 ただ,グローバルな視点で環境問題を考える上では,京都議定書の実行は,これから人類がすべきことのほんの第一歩にすぎません。温暖化対策についての京都議定書の理念を理解するためには,一度,その前段階である「気候変動枠組条約」(1992年に署名)に立ち返って考える必要があるでしょう。

 

 

西岡秀三(にしおか・しゅうぞう)
国立環境研究所理事 1939年東京生まれ。工学博士。東京大学工学部機械工学科卒。旭化成工業,国立公害研究所(現国立環境研究所),東京工業大学教授,慶応義塾大学教授を経て現職。専門は環境政策・評価,環境システム工学。1988年より気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の日本代表の1人として気候変動の長期影響評価に従事。また温暖化防止のための日本の長期政策シナリオ研究「脱温暖化2050」研究プロジェクトリーダーとして,炭素制約社会における日本の社会と技術のあり方を定量的に示す研究に携わっている。

大塚啓二郎(おおつか・けいじろう)
国際開発高等教育機構(FASID)主任研究員 1948年東京生まれ。北海道大学農学部農業経済学科卒。東京都立大学社会科学研究科修士課程修了。シカゴ大学経済学研究科大学院より経済学Ph. D. 取得。東京都立大学経済学部教授,国際食糧政策研究所(IFPRI)客員研究員などを経て現職。GRIPS/FASID国際開発プログラムディレクター,政策研究大学院大学(GRIPS)教授。専門は開発経済学で,途上国の経済発展を研究するとともに,国際稲研究所(IRRI)理事長としてアフリカでの「緑の革命」の実現にも取り組んでいる 。

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

京都メカニズム排出権取引キャップ・アンド・トレードクリーン開発メカニズムネリカ米