日経サイエンス  2005年12月号

特集:地球の未来

ボトルネックを超えて

プロローグ

G.マッサー(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 21世紀は人類史上最も驚くべき時代となりつつある。過去数世紀にわたって超幾何級数的な急増を続けた世界人口は,いまや安定化しつつあり,世界人口は今世紀中ごろには約90億人で頭打ちになるだろう。極度の貧困は,人口比率で見ても絶対数で見ても,減少しつつある。しかし,人類が人口と豊かさを増すにつれ,地球の限界はますます圧迫される。人類はすでに大量の二酸化炭素を排出しており,今世紀半ばには地球温暖化が本格的に牙をむき始めるだろう。

 

 人口,経済,そして環境──これら3つの同時的で相互に絡み合った構造的変化は,地政学的要素から家族構成まで,あらゆるものを変えつつある。そして,人類がこれまでほとんど経験したことのない大規模な問題を引き起こしてもいる。ハーバード大学の生物学者ウィルソン(E.O. Wilson)が述べたように,人類はいままさに「ボトルネック(隘路)」の時代に差しかかろうとしている。人類の知恵が問われる時代だ。

 

 これらの問題の多くは,直接・間接に成長に起因している。成長が先細りになるにつれ,人類は諸問題に終止符を打つチャンスを迎える。ボトルネックをくぐり抜けるのは大変だろうが,いったん通過してしまえば,最悪期は過去のものとなる。大きな枠組みを正すことができれば,後は日常的な決定を積み重ねていくことによって,人類の未来は安泰なものとなるだろう。その手助けをしてこそ,科学技術は宇宙基地建設よりも素晴らしい何事かを成し遂げることになる。

原題名

The Climax of Humanity(SCIENTIFIC AMERICAN September 2005)

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