日経サイエンス  2005年10月号

パーキンソン病 治療への新たな手がかり

A.M. ロサノ S. K. カリア(トロント大学)

 パーキンソン病は脳変性神経疾患のなかでも患者数の多い病気だ。少なくとも日本では12万人,北米では50万人の患者がいると推測される。世界規模の高齢化ともあいまって,2040年には患者数は倍増する見込みだ。

 

 発病すると,手足の震え(振戦)や硬直がみられ,動作が緩慢になったり,転びやすくなったりする。また人によって歩行や言語,排尿などに障害が現れる。これらの症状は,脳の神経細胞(ニューロン)が消失することによって生じる。特に黒質と呼ばれる領域で神経伝達物質ドーパミンを作っているニューロン(ドーパミン作動性ニューロン)が大きな打撃を受けるようだ。

 

 パーキンソン病で亡くなった人の脳を調べると,黒質のドーパミン作動性ニューロンにタンパク質の塊が見つかることが多い。これがニューロンが破壊される直接の原因なのかどうかは不明だが,パーキンソン病解明につながる手がかりの1つと考えられている。

 

 このタンパク質塊は,アミノ酸鎖からタンパク質の立体構造ができる際に,誤って作られた異常な構造の集まりで,本来なら細胞内の廃棄システムで取り除かれるべきものだ。ところが,さまざまな原因によって,このごみ処分系が正常に働かないと,パーキンソン病を引き起こすらしい。

 

 こうしたタンパク質の異常は,家族性パーキンソン病の研究で発見された数種の遺伝子の研究によって明らかになってきた。これらの遺伝子やタンパク質の知識を,薬物治療や脳深部刺激などの従来の治療法と組み合わせることで,根治につながる治療の道が開けるものと期待されている。

著者

Andres M. Lozano / Suneil K. Kalia

2人は数年来,パーキンソン病のさまざまな側面に関する共同研究を続けている。スペイン出身のロサノはオタワ大学でM.D.を取得。現在,トロント・ウェスタン病院とトロント大学で定位・機能的脳神経外科の教授とR. R. タスカー教授を務めている。パーキンソン病の原因解明と新しい外科的治療法の開発をライフワークとしている。カリアは先ごろ,ロサノの指導下で博士課程を修了した。パーキンソン病におけるシャペロン分子の役割を研究している。

原題名

New Movement in Parkinson's(SCIENTIFIC AMERICAN July 2005)

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