日経サイエンス  2005年5月号

Googleを超える利口な検索エンジン

J.モスタファ(インディアナ大学)

 インターネットの検索エンジンが登場したおかげで,この10年足らずの間に情報収集の方法は一変した。調べ物をするために図書館へ出向いたのはもう過去のこと。今ではキーボードを数回たたけば必要な情報を取り出せる。Googleで検索することを「ググる」と言うようになった現在,検索エンジンは私たちが求める情報を確実に探し当てる機能を整えつつある。

 

 新しい検索エンジンではすぐれた検索結果が得られるようになる。インターネットの深層にある情報まで徹底的に調べられるようになり,検索結果の表示順序にも工夫が凝らされ,過去の検索履歴を参考に結果を絞り込んでいく。近いうちに,テキストボックスに入力した単語を検索するだけでなく,さまざまなデジタルコンテンツも扱えるようになるだろう。例えば旅先で,携帯情報端末(PDA)を使ってレストランを検索すれば,現在地を指定しなくても最寄りの店を教えてくれる。簡単な図を描くだけで,探している画像を見つけ出したり,うろ覚えのメロディーをハミングするだけで曲名がわかったりするのだ。

 

 今日の検索エンジンは50年近くの歴史を持つ「情報検索」という分野に端を発する。SCIENTIFIC AMERICAN 1966年9月号に「情報の蓄積と検索」と題する論文を寄せたリペッツ(BenAmi Lipetz)は次のように述べている。「最先端の情報技術をもってしても,処理できるのは決まり切った事務作業だけだ」。さらに「コンピューターによる情報検索とは,人間が行う情報処理を深く理解し,人間に似た機能をコンピューター上で実現できたときに初めて可能になる」と結論づけた。たいへんな明察だ。

 

 確かに現在のコンピューターはまだリペッツの言う水準には到達していない。しかしまもなく,ユーザーの関心や習慣,ニーズを考慮に入れて仕事をこなせるようになるだろう。

著者

Javed Mostafa

インディアナ大学の情報科学分野に貢献したイングベ(Victor H. Yngve)の功績をたたえて設けられた「ビクター・H・イングベ教授職」の初代を務める情報学准教授。米国計算機学会が発行する情報システム論文誌ACMTransaction on Information Systemsの共同編集者でもある。同大学応用情報学研究所の所長。敬愛する恩師の1人であるバングラデシュのチッタゴンにあるBWAスクールのシャイラ女史にこの記事を捧げている。

原題名

Seeking Better Web Searches(SCIENTIFIC AMERICAN February 2005)

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