日経サイエンス  2005年2月号

マルチコアチップ インテルの新戦略は成功するか

W.W. ギブズ(SCEITIFIC AMERICAN編集部)

 半導体大手が並列処理プロセッサー「マルチコアチップ」へと戦略を転換し始めた。従来設計では発熱などの問題を解決できなくなったためだ。しかし,新チップにはまったく新しいソフトウエアが必要になる。普及の見通しは不透明だ。

 

 インテルは2005年初頭から,デスクトップ型コンピューターとサーバー向けのマイクロプロセッサーを新タイプに切り替える。演算機能を担う「コア」を1個のチップに2つ搭載した「デュアルコア」の製品だ。2001年にIBMが2つのコアを備えた「パワー4」というプロセッサーを商品化した例があるが,量産品として市場投入するのはインテルが最初になる見通し。このほかサン・マイクロシステムズはネットワークサーバー向けに8個ものコアを持つ新プロセッサー「ナイアガラ」の開発を急いでいる。

 

 個々のコアの処理速度を現在の単一コアプロセッサーよりも遅くして構造を単純にし,同時に無駄なく働かせることによって,発熱や消費電力を抑える。原理的には,現在の単一プロセッサーよりも効率的で柔軟に働くようになる。

 

 しかし,問題は並列処理用のソフトウエアを準備しなくてはならない点だ。ソフトウエア会社の対応は遅れている。また,コアの数が多い新機種が登場するたびに新しい対応ソフトに入れ替える必要も出てくる。ユーザーのアップグレード意欲をそぐ恐れがあるだろう。

原題名

A Split at the Core(SCIENTIFIC AMERICAN November 2004)

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