日経サイエンス  2005年1月号

円盤でできた宇宙

O.ブレーズ(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)

 私たちがすむ太陽系や銀河系はホットケーキのような,回転する平べったい円盤だ。若い星やブラックホール,連星の周囲などにも,ガスや岩石の円盤ができている。円盤は宇宙の至る所に存在し,莫大なエネルギーを放出して明るく輝く。このエネルギーを生み出すメカニズムはなんだろうか?

 

 円盤内部では,物質が重力によって中心に向かって落ちていく。その際に失われる重力のポテンシャルエネルギーが,物質同士の摩擦によって熱や光となって放射される。だが,これほどのエネルギーを生み出すには大量の物質が中心へと流れ込まねばならない。そうした質量流入を起こす仕組みが不明だった。

 

 近年,この謎に突破口が開けた。降着円盤中の物質が導電性を持ち,磁気を帯びていれば,磁場によって円盤内の物質の流れが不安定になることがわかったのだ。この不安定性によって乱流が発生し,円盤内の広い範囲で物質の衝突が起きて,物質の流入が促進されるらしい。

 

 円盤には惑星系のもとになる原始惑星系円盤やブラックホールの周りの円盤など,様々な種類がある。磁気がもたらす乱流が,タイプの異なる様々な円盤でどう変化し,どのような影響をもたらすかについて,研究が続いている。若い星や活動銀河核などの円盤からは,粒子ジェットが噴出することもある。こうしたジェットと円盤内の乱流との関連も注目の的だ。

 

 私たちの住む太陽系を生み出したのも降着円盤だった。降着円盤の解明は,人類がいかにして生まれたのかを解き明かすことにつながるかもしれない。

著者

Omer Blaes

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の物理学教授で,一貫して降着円盤の動的な仕組みを研究してきた。1985年に伊トリエステの国際先端研究所でPh.D.を取得後,カリフォルニア工科大学とトロントのカナダ理論天体物理学研究所でポスドク研究員として研究に取り組んだ。専門は高エネルギー天体物理学。降着円盤の研究のほか,ブラックホールや中性子星,白色矮星など小型の天体に興味を持っている。

原題名

A Universe of Disks(SCIENTIFIC AMERICAN October 2004)

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