日経サイエンス  2004年12月号

特集:アインシュタイン「奇跡の年」から100年

天才大比較 アインシュタインとニュートン

科学史

A.ライトマン(物理学者,作家)

 科学史を振り返って,アイデアや独創性などすべての意味でアインシュタインと比較できる天才はニュートンくらいしかいないのではないだろうか。2人は既知の領域をきわめ,さらに先へと導く知性を持っていた。ニュートンは微積分法を発明し,力学と運動の法則を定式化して万有引力の法則を提唱した。アインシュタインは,特殊相対性理論と量子力学の基礎を築いたほか,新しい重力理論を創造した。こうした個々の業績に加え,2人はともに科学における思考を根本から変え,「ニュートン宇宙」「アインシュタイン宇宙」と呼ぶべき世界観を生み出した。
 2人は孤独を好んだ点でも共通している。ただ,ニュートンが生涯にわたって社交嫌い,女性嫌いだったのに対し,アインシュタインは晩年,政治や哲学に関する講演や社会活動を熱心に行った。
 アインシュタインは自伝でこう述べている。「ニュートンよ,私を許したまえ。今やわれわれは,あなたが創り出した概念を,直接経験の領域から遠く離れた概念に置き換えなければならない」。アインシュタインはニュートンを実験者,理論家,芸術家として評価しながらも,ニュートンが築いた「観察可能な事実を理論の根拠とする科学」からの脱却を宣言した。

著者

Alan Lightman

物理学者,小説家。

原題名

Einstein & Newton: Genius Compare(SCIENTIFIC AMERICAN September 2004)

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