
1905年にアインシュタイン(Albert Einstein)が発表した特殊相対性理論は,当初は誰も注目しなかったが,数年かけてじわじわと広がっていった。米国のSCIENTIFIC AMERICAN誌はこの頃から,アインシュタインの仕事とそれに対する反響を追い始めた。本稿では同誌に寄せられた専門家やアインシュタイン自身の言葉を通して,巨人の軌跡を振り返っている。
相対性理論は最初は数学者に評価され,じきに物理学者も目を向けるようになった。そして1919年の皆既日食の時,遠方の恒星からの光が太陽の近傍でわずかに曲がっていることが観測され,その値は相対性理論の予測にぴたりと一致することが確認された。アインシュタインは一躍,時代の寵児になった。ニューヨークの有名な教会の入り口に像が彫り込まれ,SCIENTIFIC AMERICANは彼の相対性理論を簡単にわかりやすく解説するエッセイを募集するコンテストまで実施した。アインシュタインは生きながら伝説となった。
アインシュタインは1955年4月に死亡した。生涯の好敵手だった量子力学の創始者ボーアは,その死を悼んで,「もはやあの優しい微笑みを見,話にも耳を傾けられないことは深い悲しみだ」と語った。
原題名
A Century of Einstein(SCIENTIFIC AMERICAN September 2004)