日経サイエンス  2004年12月号

特集:アインシュタイン「奇跡の年」から100年 

太陽電池からGPSまで 身の回りのアインシュタイン

エレクトロニクス

P.ヤム(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 ニューヨーク市のクイーンズは空港とメッツ球場があるだけの場所だ。飛行機に乗る予定もなく,メッツも遠征に出掛けていたある土曜日の午後,私は思いたってクイーンズの北東部,カレッジポイントの近くまで行ってみた。20番街沿いの混み合ったショッピングモールで,アインシュタインの影を探した。

 

 いうまでもないが,さまざまな科学研究においてアインシュタインの理論は不可欠だ。物理学者が粒子を光速まで加速させ,天文学者が天象を測定しモデル化することを可能にした。だが,私たちが日常的に遭遇する技術もアインシュタインの生涯にわたる功績と深くかかわっている。光はどうやって粒子のように振る舞うのか,原子はどのように電子を放出するのか,速度と重力はどのくらい時計の進み方に影響するのか。これらを説明する彼の理論は,今日の装置を作り上げるのに重要な役割を果たしている。

 

 カレッジポイントモールで最初にアインシュタイン理論を応用した製品に出合ったのは,巨大ディスカウントストアにまさに入ろうとしたときだ。光センサーが私の接近を感知し,ドアがさっと開いた。このセンサーは2つの電極に挟まれた半導体からできており,光に反応する。光の強度が変化すると,センサーが発生する電流の量が変化し,適切な回路に接続すればドアが開く仕組みだ。

 

 このようなセンサーは「光電効果」の代表的な応用例で,金属に光を当てると電子が飛び出すことを利用している。光電効果は現在,さまざまな装置の基礎となっており,夕暮れ時に街灯をつけ,複写機のトナー密度を調整し,カメラの露出時間をコントロールする。光電効果は後の光電子増倍管の発明にもつながり,天文学用の検出器やビデオカメラで光を増幅させる役目を果たしている。また,目に見えてわかる応用例は太陽電池だ。太陽電池は入射光の15~30%を電気に変換する。計算機や時計をはじめ,環境に配慮した住居,軌道周回衛星や火星探査機などさまざまな用途の電力供給に利用されている。




再録:別冊日経サイエンス247「アインシュタイン 巨人の足跡と未解決問題」

原題名

Everyday Einstein(SCIENTIFIC AMERICAN September 2004)

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