日経サイエンス  2004年10月号

ついに証明された? ポアンカレ予想

G. P. コリンズ(SCIENTIFIC AMERICAN 編集部)

 今から100年前、偉大な数学者ポアンカレが提唱した数学の難問が、ついに証明されたようだ。「私たちが住んでいる3次元空間を構成する様々な3次元多様体の中で、最も単純で簡単なのは『3球面』と呼ばれる形。これと同じくらい簡単な形はほかにない」という予想だ。2002年ロシアの数学者ペレルマンが、ついにポアンカレ予想の証明に成功したと見られ、注目を集めている。

 

 ポアンカレ予想は、米クレイ研究所が100万ドルの懸賞金をかけた7つの難問「ミレニアム問題」のうちの1つ。ペレルマンはこれまで解析に知られていた多様体の分類手法を、あらゆる3次元多様体に応用するための新たな手法を見出し、証明に成功した。またポアンカレ予想が証明されたことで、私たちの宇宙が取り得る3次元の形がすべて明らかになり、分類できるようになった。

 

 ペレルマンの証明は「形」の本質を問題にするトポロジーの研究を大きく進展させるだけでなく、素粒子物理学や量子重力論の発展にも貢献しそうだ。

原題名

The Shapes of Space(SCIENTIFIC AMERICAN July 2004)

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