日経サイエンス  2004年8月号

進化するGPS

P.エンゲ(スタンフォード大学)

 全地球測位システム(GPS)はカーナビなどで身近な存在になったが,今後さらに進化を続けていく。来年にも新たな衛星が打ち上げられ,近い将来には航空機の自動着陸など高い信頼性が求められる新サービスも実現可能になるだろう。

 

 GPSの利用者は現在,世界で3000万人を超える。携帯電話や自動車への搭載がさらに進み,利用者数は急増していくと見られる。GPS受信機は衛星からの測位信号を利用し,少なくとも4基の衛星との距離を三辺測量(三角測量に似た手法)によって正確に測定して,自らの位置を割り出す。特別に符号化された無線信号が“目に見えない定規”の役割を果たし,衛星から受信機までの距離を測る。

 

 民生用と軍用の信号が近く追加される予定で,測位精度が高まる。信号の追加は2段階で進み,まず2005年に打ち上げられる衛星によって3種類,2008年ころに1種類の信号が新たに利用可能になる。これらの信号を利用すると,電離層による信号の伝播遅れを個別の受信機で算出し,その結果をもとに電離層の電子密度を推定して,誤差を抑えられるようになる。また,複数の信号を差し引きして「うなり周波数」を作り出すことで,高精度の測位に使う新たな“定規”が利用できるようになる。

 

 一連の技術によって測位誤差の上限値をリアルタイムで受信者に提供すると,GPSサービスの信頼性を保証できるようになる。このほか,電波の干渉・混信に対する耐性を高めるため,制度面や運営面,技術面でさまざまな取り組みが進んでいる。

著者

Per Enge

スタンフォード大学で航空学と宇宙航行学の教授を務める。工学部の副学部長とGPS研究所の所長を兼務。GPS研究所で彼が取り組んでいるのは,測位誤差の上限値をリアルタイムで提供でき,混信に強い理想的なGPS装置の研究開発だ。米国航法学会(ION)のケプラー・サーロウ・ブルカ賞を受賞。米電気電子学会(IEEE)および米国航法学会のフェロー会員。米連邦航空局(FAA),米海軍,米航空宇宙局(NASA)の支援に対して,また,スタンフォード大学をはじめ広く航空航法分野の仲間たちに謝意を表している。

原題名

Retooling the Global Positioning System(SCIENTIFIC AMERICAN May 2004)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

ナブスターグローナスガリレオディファレンシャルGPSD-GPS擬似雑音符号WAASLAAS準天頂衛星GPSIII