
1998年に観測された遠方の超新星は宇宙の膨張が加速していることを示していた。その後の研究でも加速膨張が裏付けられた。ところが,さらに遠くにある超新星を調べた結果,宇宙膨張が加速する以前には減速期があったことがわかった。
2001年,著者の1人であるリースはハッブル宇宙望遠鏡による反復観測の結果,非常に遠方にあるIa型超新星を幸運にも発見した。この超新星SN1997ffは赤方偏移から推定して約100億年前に爆発したもので,かつて宇宙膨張が減速していた時期があったことを示す初の直接証拠となった。その後の超新星の観測結果から,膨張速度が減速から加速に変わった“転換点”はおよそ50億年前であることもわかった。
膨張速度がいつ減速から加速に転じたのかをより正確に突き止めれば,膨張を加速させている暗黒エネルギーの正体や宇宙の行く末が明らかになるだろう。暗黒エネルギーの密度が一定であるか,時間とともに増加する場合,1000億年もするとほとんどの銀河は赤方偏移があまりに大きくなって観測不能になる。逆に暗黒エネルギー密度が減少して,物質が再び宇宙の主役となれば,宇宙の地平線が広がり,いまはまだ見えない宇宙の姿が見えてくるだろう。
宇宙の未来を予測するには,暗黒エネルギーの正体を何とかして突き止めるしかない。
著者
Adam G. Riess / Michael S. Turner
2人は宇宙膨張の歴史を探る研究を先導してきた。リースは宇宙望遠鏡科学研究所(ハッブル宇宙望遠鏡の運営主体)の天文学者で,同時にジョンズ・ホプキンズ大学で物理学と天文学の非常勤准教授を務めている。1998年,加速膨張の発見を報告した高赤方偏移超新星探索チームの論文では代表執筆者となった。ターナーはシカゴ大学のローナー記念講座教授で,全米科学財団で数学と物理学部門の副部長を務めている。彼は1995年にクラウス(LawrenceM. Krauss)と共同で執筆した論文で宇宙膨張の加速を予言していた。「暗黒エネルギー」という言葉の生みの親でもある。
原題名
From Slowdown to Speedup(SCIENTIFIC AMERICAN February 2004)
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