日経サイエンス  2004年5月号

ICタグの未来 実用化への本当の課題

R.ウォント(インテル)

 身の回りのあちこちに埋め込まれたマイプ「ICタグ」が,コンピューターネットワークとつながって,様々なサービスを提供してくれる──そんな時代が近付いている。買ってきたプリンターはコンピューターのそばに置くだけで自動的に接続され,冷蔵庫は牛乳とサラダの賞味期限を検知して教えてくれる。スーパーでショッピングカートに欲しいものを放り込めば出口に向かう間に精算が完了するという具合だ。

 

 すでに一部の高速道路では,車に貼ったICタグの情報を料金所の装置で読み取り,口座から料金を引き落としている。車をいちいち停車させ,渋滞を招くこともない。

 

 一方でICタグは,個人のプライバシーをおびやかす危険もはらむ。本格的に普及すれば,誰がいつ何を買ったかという履歴が,簡単に把握できてしまう。店鋪やメーカー,警察や裁判所など,様々な機関が,これらの情報を欲しがるだろう。米では消費者団体が,商品にICタグを付けて在庫を管理しようとした企業に対する,不買運動も起きている。

 

 こうした問題を解決し,技術革新によって低コスト化できるかどうかが,ICタグ普及のカギを握る。うまく普及すれば,人間がコンピューターに合わせるのではなく,コンピューターが人間に合わせてくれる,快適な社会が実現するはずだ。

著者

Roy Want

カリフォルニア州サンタクララにあるインテル研究所コーポレート・テクノロジー本部の主席エンジニア。ユビキタス・コンピューティング実現に向けた長期的な研究計画の作成を指揮している。社会人になって間もないころは,イタリアのオリベッティ研究所で,ビルの中にいる人の位置を自動的に特定するシステムの研究に取り組んだ。ゼロックスのパロアルト研究所(PARC)が進めていた「ユビキタス・コンピューティング・プログラム」では,センサーなどの情報をもとに状況に応じて動作するコンピューターシステムの開発を先導したほか,組み込み型システムのグループを率いた。このほかにも,電子タグの応用技術や,操作しやすいユーザーインターフェースを備えた携帯情報端末(PDA)の設計に取り組んだ。モバイルコンピューターや分散コンピューターに関する特許を50以上も保有し,米国電気電子学会(IEEE)が発行するPervasiveComputing誌の副編集長も務めている。

原題名

RFID : A Key to Automating Everything(SCIENTIFIC AMERICAN January 2004)

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