
テロリストたちがオフィスビルを襲撃して人質を取って立てこもった。入口や窓はテロリストによってふさがれ,外からはテロリストの人数や所持している武器,人質の監禁場所などは見えない。しかし,特別機動隊のSWATチームが突入し,テロリストたちは武器を手に取る間もなく捕まった。彼らはどうやって中の状況を知ったのか。
その秘密はミニカーほどの大きさのロボットにある。SFのような世界だが,これは国防総省高等研究計画局(DARPA)が1998年に示したシナリオとほぼ同じだ。市販の部品を使ってミニロボットを作り,それらを集団で動かすことで人命救助や人間が入り込めない場所の探査に使おうという研究が盛んになっている。
しかし,現状では冒頭の話の実現は無理で,新しい設計思想が必要になる。大型ロボットと違って電源やスペースに制約があるため,作戦遂行に必要な部品をすべて組み込むことはできない。ビデオカメラのような小型の装備でさえ,小型ロボットにとってはとてつもない重荷になる。このため,センサーや処理能力,物理的な強度などを複数のロボットに分散させ,共同作業させる必要がある。
私たちはミリボットと呼ぶロボットを開発した。列車のようにつながって障害物を乗り越えたり,初めての場所でも周囲を調べながら移動することができる。このほかの研究グループもユニークなミニロボットを開発している。
今後の焦点は少数の個体の制御から数百数千の個体の管理へ変わる。実用的なミニロボットを開発するまでには長い道のりが残っている。しかし,技術が軍事用途などから広がっていくにつれて,ミニロボットの能力も大幅に向上すると予想される。
著者
Robert Grabowski / Luis E. Navarro-Serment / Pradeep K. Khosla
コースラはカーネギーメロン大学の電気工学科と計算機工学科の学科長を務めている。ほとんどの工場で使われている直接駆動式マニピュレーターアームを開発したことで知られる。グラボウスキーとナバーロ=サーメントは博士課程の学生。グラボウスキーは米国海軍で8年間軍務に就き,核反応炉の研究を手がけた。ナバーロ=サーメントは工場の自動化や制御システムを専門としており,以前はメキシコのモンテレイ工科大学グァダラハラ校電気工学科の学科長を務めていた。
原題名
An Army of Small Robots(SCIENTIFIC AMERICAN November 2003)
サイト内の関連記事を読む
ビーコン/協調作業/役割分担/超音波距離測定と推測航法/鏡像
キーワードをGoogleで検索する
役割分担/協調作業/ビーコン/超音波距離測定と推測航法/鏡像