
米国の火星探査機マーズ・エクスプロレーション・ローバー1号が1月3日,火星表面に無人探査車スピリットを着陸させた。高性能カメラを積んだスピリットは火星の鮮明な画像を送り始めており,今後送られてくるデータから水の存在や生命の可能性などについて有力な情報がもたらされるだろう。
ローバー1号は昨年6月に打ち上げられ,4億8700万kmの宇宙空間を旅してようやく火星に到着した。火星への軟着陸に成功したのは,1997年の米国の探査機マーズ・パスファインダー以来7年ぶりのことだ。1月24日には,ローバー1号と同型の2号が同様の無人探査車オポチュニティーを別の場所に着陸させる。
今回,スピリットが着陸したのはグセフクレーター。このクレーターは火星の歴史の早い時期に小惑星か彗星が衝突してできたと考えられており,直径150kmもある巨大なものだ。米航空宇宙局(NASA)は,かつて湖があったかもしれないとしてこの場所を選んだ。確かに水の流れによってできたと思われる長く深い谷が,このクレーターにつながっている。スピリットは3カ月間,この周辺で岩石と土壌を調べ,水が存在した痕跡を探る。
もう1台のオポチュニティーは広大なメリディアニ平原に着陸する。通常は水が液体で存在しているときに形成される赤鉄鉱が広範に露出しているからだ。
スピリットとオポチュニティーは重さ約180kgで,高さ1.5m,幅2.3m,長さ1.6mのゴルフカートほどの大きさ。1日40m程度,3カ月間に合計1kmほどの距離を用心深くゆっくり動き回る。2つの目をもったパノラマカメラの首を伸ばし,周囲をぐるりと立体的に写す。ほかに顕微鏡や小型熱放射分光計など全部で5種類の科学計測機器をもつ。風化しホコリをかぶった岩石の表面を磨いて内部を調べる研磨装置も備えている。さらに,それらの機器はロボットアームで操れるようになっており,“ロボット地質学者”のようだ。
火星に水が存在する,あるいはかつて存在したことは,これまでの探査機による観測データからほぼ間違いないとみられている。今回の双子探査機の活動でその直接的な証拠が見つかれば,地球外生命の存在についても多くの進展が期待できそうだ。
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