日経サイエンス  2004年2月号

デジタルデバイド解消の落とし穴

M.ウォーショー(カリフォルニア大学)

 この10年,多くの政治家や社会科学者が1つの社会的な分裂について次第に関心を抱くようになってきた。コンピューターやインターネットを利用できる人とできない人の間にある溝のことだ。1990年代半ば,米電気通信情報局がこの状況を「デジタルデバイド」と呼んだことで知られるようになった。まもなくこの言葉は各国間の情報技術の格差を表すものとしても使われるようになった。

 

 一国の中でも国と国の間でも,現実に格差は存在する。2001年末,通信技術の公共利用を推進するベントン財団が報告書を発表した。それによると,米国で年間世帯収入が7万5000ドル以上の世帯の80%がインターネットを利用しているのに対して,最貧困層ではその数は25%しかなかった。白人では全世帯の55%がインターネットを利用しているが,黒人では31%,ヒスパニックでは32%になっている。世界に目を向けると,アフリカの多くの国では,インターネットを利用できる人は全人口の1%以下だ。当然だが,こうした格差は社会・経済的格差を示す他の指標とも高い相関がある。

 

 だが現実はもっと複雑だ。デジタル技術に接したり利用したりする状況は各国で異なるので,デジタルデバイドを単純に定義するのは実態にそぐわない。地域の図書館で月1回ネットサーフィンをする米国人は「インターネットを利用できる状況にない」とされるが,発展途上国では「利用できる状況にある」と考えてよいだろう。機械的に分類すると,技術をめぐる不平等のために誤った議論が導かれてしまう。

著者

Mark Warschauer

カリフォルニア大学アーバイン校教育学部副学部長。大学の情報・計算機科学部および情報技術・組織研究センターにも所属している。またLanguageLearning & Technology誌の創刊から編集に携わり,教育と技術,開発について7冊の著書,編書がある。「PapyrusNews」という技術と社会に関する電子メールのニュースレターを発行している。人間と社会の発展のために人々および社会が情報技術を利用する際のさまざまな現状を,エジプトや中国,インド,ブラジル,シンガポールなどで調査してきた。

原題名

Demystifying the Digital Divide(SCIENTIFIC AMERICAN August 2003)

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