
イチョウの葉の抽出物は記憶の衰えを防ぐ効果があるとされ,人気の高い健康食品のひとつだ。ドイツで痴呆症の治療にイチョウ葉エキスの使用が承認されているほか,米国でも現在,国立加齢研究所がアルツハイマー病の治療における有効性を評価する臨床試験を進めている。
しかし,こうしたサプリメントにどの程度の効果があるかは依然として不明なところが多い。著者らはイチョウ葉エキスに期待どおりの効果があるかどうかを検討するために,これまでに出された論文や実験の内容について分析を試みた。
個々の実験はサンプル数や記憶テスト,被験者の状況(痴呆や精神症状があるかどうかなど)がまちまちで,単純な比較をしにくい部分も多いが,全体としてイチョウ葉エキスの認知機能に対する効果はごくわずかながら認められた。ただ,同程度の効果はキャンディーなど糖分を口にした場合と変わらないという。また,記憶力を高める効果は投与直後に表れるという実験結果も出ている。(編集部)
著者
Paul E. Gold / Larry Cahill / GaryL. Wenk
3人は脳機能増強に関する研究の第一人者。ゴールドはイリノイ大学の心理学・神経科学の教授。カーヒルはカリフォルニア大学アーバイン校の神経生物学・行動習性部門の助教授で,神経生物学・学習・記憶センターの特別研究員。ウェンクはアリゾナ大学の心理学・神経学の教授を務める。
原題名
The Lowdown on Ginkgo Biloba(SCIENTIFIC AMERICAN April 2003)