日経サイエンス  2003年6月号

特集:人体をつくる 再生医療の挑戦

肝臓再生を目指して

組織幹細胞を使って

谷口英樹(横浜市立大学医学部)

 肝臓の高い再生能力は古くから知られてきた。この力は,単純な細胞分裂によるものと考えられていたが,肝臓の幹細胞が明らかになったことで,幹細胞の高い増殖・分化能が再生能を支えていることがわかってきた。
 肝幹細胞から分化するのは肝細胞と胆管上皮細胞で,いずれも肝臓の機能の実体といえる細胞だ。肝幹細胞の移植により,肝臓や胆管が再構築されることがマウスで確認され,ヒトでの治療も現実味を帯びてきた。
 また,消化器系の細胞は分化の可塑性が高く,異なる組織の細胞に分化しやすいことが知られている。これを利用して,肝臓や小腸の細胞からすい臓のインスリン分泌細胞を分化させ,糖尿病の治療に用いるといった方法も考えられている。

著者

谷口英樹(たにぐち・ひでき)

横浜市立大学医学部臓器再生医学講座教授。1988年筑波大学医学専門学群卒業。日本学術振興会特別研究員を経て,1997年より筑波大学臨床医学系消化器外科講師。2001年に筑波大学大学院人間総合科学研究科再生医学専任講師。2002年より現職。

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