
高齢化が進むとともに視覚障害で悩む人が増えている。このうち,角膜から瞳孔,硝子体という透明な光の通り道が濁る,白内障に代表される病気に対してはさまざまな治療法が工夫されている。しかし,入ってきた光を受け止めて,その信号を脳にまで送る網膜が傷つきその機能が失われる病気・障害に対しては,有効な治療法がほとんどないのが現状だ。
しかし,ES細胞などを利用する「再生医療」という考え方の登場で,将来こうした網膜が原因の病気も治療できる可能性が出てきた。網膜を構成する神経細胞である視細胞などをES細胞からたくさん作り,その細胞を目の網膜に移植することで失われた視細胞を補充し,見る機能を回復しようというわけだ。実用化には解決しなくてはならない難しい課題がまだまだ多いが,将来は日本に3万人いると言われる網膜色素変性などの患者が光を取り戻せる日が来るかもしれない。
著者
高橋政代(たかはし・まさよ)
京都大学医学部附属病院探索医療センター開発部助教授。1986年京大病院眼科学教室入局。1995年に米サンディエゴのソーク研究所に留学,網膜細胞移植の研究を始めた。現在は網膜遺伝性疾患と網膜黄斑部疾患の診療を続けながら新しい治療法の開発研究にも力を入れている。
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