日経サイエンス  2003年5月号

発明家に追いついた 遺伝的プログラミング

J.R. コーザ(サイエンティフィックゲームズ社) M. A. キーン(エコノメトリックス社) M. J. ストリーター(ジェネティックプログラミング社)

 細胞の複雑な生化学的機構から人間の脳構造まで,進化によって自然界は想像を絶するような複雑なものを生み出してきた。その進化のプロセスをコンピューター上で再現し,問題の解決や発明に生かそうという技術が「遺伝的プログラミング」だ。
 進化のプロセスを電子回路で再現すると──。まず,コンデンサや抵抗,コイルといった素子と線をでたらめに結んだだけの回路を作る。これは「初期杯」にあたる。交配によって回路がくみ合わさり,目的とする性能に近づく回路ができる。比較的目的に近い回路はそのまま複製。あまりにかけ離れているものは淘汰される。ごく一部は突然変異する。こうした操作を何百,何千世代と繰り返すと,狙った性能の回路ができるという仕組みだ。
 エレクトロニクス分野では,すでに特許として成立している15の発明を再現している。特に電子回路の設計では優れた成果を出しており,中には,人間が発明した技術よりも進歩したものも1つあった。遺伝的プログラミングが作り出した回路は特許審査というテストをパスできる水準にある。私たちは遺伝的プログラミングが考案した発明を特許出願した。
 あと10年もすれば,パソコンの性能が現在のスーパーコンピューター並になる。そのころには,個人が所有するパソコンを使って発明できるようになっているかもしれない。
 またフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)など,物理的に回路構成を書き換えられるチップが出回っている。こうしたチップを使えば,論理関数や接続といったチップの性格を瞬時にがらりと変えられる。FPGAを使えば遺伝的プログラミングを実行できるチップが実現する。こうしたチップは「進化型ハードウエア」と呼ばれ,使っているうちに性能が向上していく。

著者

John R. Koza / Martin A. Keane / MatthewJ. Streeter

3人は1000個のペンティアムプロセッサーを並列計算させるコンピューターを作り,緊密に協力しながら遺伝的プログラミングの研究を進めている。コーザは1987年に遺伝的プログラミングを発明し,現在はスタンフォード大学で薬学部のバイオインフォマティクスプログラムと電気工学科の客員教授を務める。キーンはエコノメトリックス社(シカゴ)の主席研究員。ストリーターはジェネティックプログラミング社(カリフォルニア州ロスアルトス)にシステムエンジニア兼研究員として勤務している。

原題名

Evolving Inventions(SCIENTIFIC AMERICAN February 2003)

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