日経サイエンス  2003年5月号

マグネター 磁石星の驚異

C.クーベリオト(米国宇宙科学技術センター) R. C. ダンカン(テキサス大学) C. トンプソン(カナダ理論宇宙物理学研究所)

 極めて強いガンマ線やX線を爆発的に放出する天体が少数ながら見つかった。数秒周期のパルスとして放出を繰り返すのが特徴で,1回限りの爆発現象である「ガンマ線バースト」とは明らかに異なる。正体不明のまま「ソフト・ガンマ・リピーター」と名づけられた。発生源として考えられるのは,ブラックホールに次ぐ奇妙な天体,中性子星だ。

 

 理論研究によって,発生源の中性子星は猛烈に強い磁場を持つと推定され,マグネター(超強磁場星)と名づけられた。

 

 太陽の8倍以上の質量を持つ恒星が超新星爆発を起こすと,星の内核が内側に圧縮されて小さな中性子星になる。生まれたての中性子星は1秒間に数十回ものスピードで自転しているが,この自転が十分に速いと強烈な磁場が生じる。この磁場が地震に似た不安定性を示し,爆発的なエネルギー放出につながることがわかった。「スタークエーク(星震)」と呼ぶ現象だ。一方,生まれた中性子星の自転がそれほど速くない場合は極端に強い磁場はできず,電波を放射するパルサーという天体になる。

 

 これまでに特定されたマグネターは12個。観測では日本のX線衛星「あすか」も活躍した。中性子星のうち,かなりの部分はマグネターだと考えられる。しかし,マグネターが活発に活動する期間はたったの1万年にすぎない。天の川銀河の中には活動を終えた多くのマグネターが観測されないままさまよっているのだろう。

著者

Chryssa Kouveliotou / Robert C.Duncan / Christopher Thompson

3人は過去40年にわたってマグネターの研究に取り組み,ここ5年は緊密な共同研究を行っている。クーベリオトは観測家で,アラバマ州ハンツビルにある米国宇宙科学技術センターに勤務。お気に入りはソフト・ガンマ・リピーターのほか,ガンマ線バースト,X線連星,そして飼い猫のフェリックス。ジャズから考古学,言語学まで関心は幅広い。他の2人は理論家で,ダンカンはテキサス大学オースティン校,トンプソンはトロントにあるカナダ理論宇宙物理学研究所に所属。ダンカンは超新星やクォーク物質,銀河間ガス雲を研究してきた。若かったころ,1980年のモスクワオリンピック向けの代表選手選考レースでフルマラソンを走り,2時間19分の記録を残している。トンプソンは宇宙ひもから初期太陽系における巨大隕石衝突まで,さまざまなテーマを研究してきた。山歩きが趣味で,やはり熱心なランナーでもある。2003年1月,3人は高エネルギー天文学の優れた研究に贈られるブルーノ・ロッシ賞を共同受賞した。

原題名

Magnetars(SCIENTIFIC AMERICAN February 2003)

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