日経サイエンス  2003年4月号

光で病巣をたたく

N.レーン(ロンドン大学ユニバーシティカレッジ)

 光を当てると激しい毒性を示す化学物質ポルフィリンを使って,ガンや動脈硬化症を治療する「光力学療法」が注目されている。この治療法は1970年代に誕生したが,近年,とくに失明の原因となる加齢性黄斑変性症の進行を止める方法として開発が進んできた。

 

 光力学療法の発想は,ポルフィリン症と呼ばれるまれな血液疾患から生まれた。この病気では,ポルフィリンを体内でうまく処理できずに,皮膚や骨,歯などに蓄積する。ポルフィリンには強い光毒性があるため,患者が日光に当たると皮膚が破壊され,極度の貧血が起こる。

 

 光力学療法では,光感受性薬として改良した合成ポルフィリンをガン組織やアテローム斑に取り込ませ,光を照射することで病巣を破壊する。目的の組織にあわせて効率よく治療をするには,ポルフィリンを運ぶ方法や照射する光の波長も重要になる。現在,数種の薬が臨床試験中で,特定のガンを対象に販売されているものもある。(編集部)

著者

Nick Lane

ロンドン大学インペリアルカレッジで生化学を学び,ロイヤルフリーホスピタルで臓器移植時における酸素フリーラジカルと代謝機能に関する研究で学位を得た。ロンドン大学ユニバーシティカレッジの名誉上級研究員であり,またロンドンに本社をおく医学マルチメディア企業アデルフィメディシンの戦略ディレクターも務める。近著にOxygen:The Molecule That Made the World(Oxford University Press)がある。

原題名

New Light on Medicine(SCIENTIFIC AMERICAN January 2003)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

フォトダイナミクスポルフィリン体光線過敏症色素沈着光毒性遺伝性疾患代謝障害肝障害