日経サイエンス  2003年4月号

戦争を変えるGPS兵器の全貌

M.ピュトレー(The Journal of Electronic Defense 誌)

 2001年11月のある寒い夜,第389遠征戦闘飛行隊指揮官の空軍中佐ローヘッド(Tom Lawhead)はF-16戦闘爆撃機のコックピットから下を見つめていた。地上ではアフガニスタンの反タリバン兵1000人と米軍特殊部隊がカンダハル空港に進軍中だ。暗視スコープを通しても,約4600m下の地上の友軍が目標(パキスタンに通じる幹線道路の遮断)に向かって前進しているかどうか判断が難しい。

 

 ところが事態はさらに複雑になった。近くの尾根の反対側で車両部隊が移動しているのを,ローヘッドの飛行隊の1人が発見したのだ。地上部隊と偵察隊との間ではすでに無線連絡がとれなくなっており,接近中の車両が帰還中の偵察隊なのか,それとも敵の奇襲なのかは誰にもわからなかった。

 まもなく答えが判明した。尾根を越えるとすぐ,謎の車両部隊はライトを消してロケット榴弾を発射し,激しい銃撃戦になった。タリバンの反撃だ。

 

 「特殊部隊の前線航空統制官は,敵味方の位置の識別に追われていた」とローヘッドは言う。互いに約200~300mしか離れていなかったからだ。「約4.8km上空で銃撃戦を見ながら待機していた。そしてようやく航空統制官から第1弾の投下座標の指示がきた」。攻撃機隊は急降下して高精度弾を投下,敵襲は途絶えた。ローヘッドは語る。「敵の奇襲がもし成功していたら,アフガニスタン南部を奪取するという私たちの計画は失敗していたかもしれない」。

 

 米軍の攻撃機が暗闇の中で,自軍からわずか200~300mしか離れていない目標に命中させられたのは,高精度の新兵器のおかげだ。攻撃機が装備していたのは従来の「愚かな」通常爆弾ではなく,最新式で安価な「スマート(賢い)」爆弾だった。

 

 現場の航空統制官はまず,GPS(Global Positioning System: 全地球測位システム。カーナビにも使用されている)による座標を攻撃機に無線連絡した。F-16のパイロットが火器管制コンピューターにデータを入力すると,これが兵器に搭載されたマイクロコンピューターへとダウンロードされる。投下後,爆弾に搭載された慣性誘導システム(InertialNavigation System: INS)はGPSによる位置情報をもとに,50%の確率で指定された攻撃地点の半径約26m以内に爆弾を誘導した。

 

 GPS誘導兵器は,アフガニスタンで初めて地上部隊の支援に使用された。すでに1999年のコソボ紛争,イラク北部および南部の飛行禁止空域にあるイラク軍防空施設への攻撃などで限定的に使用されてはいたが,アフガン攻撃では投下した爆弾の圧倒的多数がGPS衛星誘導式になった。米国防総省は,今後想定されるイラクへの集中攻撃でさらに大量のスマート兵器の使用を計画している。

著者

Michael Puttré

The Journal of Electronic Defense(JED)誌編集長。JEDは主に電子戦,電子戦闘指揮統制,高精度誘導兵器などの話題を取り扱う月刊誌。ピュトレーは軍事・技術ジャーナリストとして15年の経歴を持つ。

原題名

Satellite-Guided Munitions(SCIENTIFIC AMERICAN February 2003)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

統合直接攻撃弾JDAM風偏差修正型弾薬ディスペンサーWCMD統合スタンドオフ兵器JSOW統合空対地スタンドオフミサイルJASSM誤爆電波妨害