日経サイエンス  2003年3月号

ガンマ線バーストとブラックホールの誕生

N.ゲーレルズ(米航空宇宙局ゴダード宇宙飛行センター) L. ピロ(イタリア科学技術委員会 天体物理学・宇宙物理学研究所) P. J. T. レナード(サイエンス・システムズ・アンド・アプリケーションズ社)

 宇宙で最も明るい光を放つガンマ線バースト。1967年7月に大気圏外での核実験を見張っていた軍事衛星が偶然発見して以来,大きな謎とされてきたが,秘密のベールが次第にはがされてきた。

 

 バーストは宇宙のどこかで毎日2つか3つ発生している。1つ1つが非常に特徴的だが,2種類に大別できる。放射が2秒未満で終わる「短命」なバーストと,それ以上の「長命」なバーストだ。そのエネルギーは超新星爆発やクエーサーをはるかにしのぐことから,ブラックホールが関係しているのではないかと考えられるようになった。

 

 では,どのようにして生まれるのか。有力視されているのが,極超新星(ハイパーノバ)説,またはブラックホール説と呼ばれるモデルだ。太陽の20~30倍の質量を持つ星が重力崩壊して降着円盤をつくる過程で強力な磁場が発生し,降着円盤が加熱されて超高温になり,ガンマ線とプラズマの火の玉が細いジェットとなって噴き出す。これに次ぐのが高密度天体合体説だ。中性子星同士や中性子星とブラックホールが衝突したときに,ジェットを吹き出すという。

 

 それでも,発生原因を正確には特定できたわけではなく,その多様さについてもほとんどわかっていない。バーストのほとんどが数十億光年の彼方で発生していることから,その放射は宇宙の初期の時代を照らし出しているといえるかもしれない。バーストの研究は星が初めて誕生したころの宇宙の姿を解き明かすことにつながる。

著者

Neil Gehrels / Luigi Piro / Peter J. T. Leonard

ゲーレルズとピロはコンプトン・ガンマ線観測衛星やBeppoSAX衛星でガンマ線バーストを観測し,この分野の研究を先導してきた。ゲーレルズは米航空宇宙局(NASA)のゴダード宇宙飛行センターにある高エネルギー宇宙物理学研究所で,ガンマ線・宇宙線・重力波宇宙物理学部門長を務めている。ピロはローマにあるイタリア科学技術委員会(CNR)の天体物理学・宇宙物理学研究所に所属している。レナードはサイエンス・システムズ・アンド・アプリケーションズ社に勤め,ゴダード宇宙飛行センターでロケットや人工衛星の打ち上げを支援している。

原題名

The Brightest Explosions in the Universe(SCIENTIFIC AMERICAN December 2002)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

ブラックホール降着円盤残光極超新星説高密度天体合体説