日経サイエンス  2003年2月号

死の灰をまき散らすダーティーボム

M.A.レビ H. C. ケリー(アメリカ科学者連盟)

 2002年5月,アルカイダに心酔している米国人がダーティーボム(汚い兵器)を製造・使用しようと計画した容疑で逮捕され,米国を初め世界を恐怖に陥れた。生物・化学兵器だけでなく,新たなタイプのテロの脅威が高まっているのだ。

 

 ダーティーボムはTNT火薬のような通常の爆薬を使って放射性物質を都市にまき散らす。核兵器ほどの威力はないものの,比較的簡単に製造できる。もし大都市で使用されたら,死者はそれほど出なくても,住人を恐怖のどん底に陥れ,その地域の総資産価値を暴落させるだろう。また,放射性物質の多くは道路やガラスと化学的に結合するため,長期間にわたって汚染が残り,浄化作業には膨大な費用がかさむ。

 

 国際原子力機関(IAEA)が指摘するように,ダーティーボムに転用可能な放射線源はどの国にもある。しかし,研究機関や病院,企業での管理は甘く,放射線源の多くが行方不明になっており,一般市民が被爆した事件も起きている。

 

 対策として,まず放射性物質の管理の強化が欠かせない。もし盗難にあったら,それを発見するため,道路や空港,駅などに放射線検出器を導入する必要がある。また放射性物質を使わない代替技術の開発も急ぐべきだ。

著者

Michael A. Levi / Henry C. Kelly

2人はワシントンに本拠を置く科学と公益に関する研究・支援組織であるアメリカ科学者連盟(FAS)に所属している物理学者。レビはFASの戦略的安全保障プロジェクトを指揮している。核拡散防止と核兵器政策に焦点を当てて研究している。ケリーはFASの総裁だ。FASに参加する前は,1993年から2000年まで,ホワイトハウスの科学技術局で科学・技術担当の次官補を務めていた。

原題名

Weapons of Mass Disruption(SCIENTIFIC AMERICAN November 2002)

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