
2002年のノーベル物理学賞が小柴昌俊東京大学名誉教授に決まった。大マゼラン星雲で起きた超新星爆発で放出されたニュートリノを1987年2月に巨大水槽を使った観測装置「カミオカンデ」で検出し,ニュートリノ天文学という新領域を拓いたことが評価された。このときカミオカンデがキャッチしたニュートリノはわずか11個である。しかし,たったそれだけのニュートリノが,超新星として一瞬だけ明るく輝く星の最期の姿について実に多くのことを教えてくれる。
星の一生は,水素を燃料に核融合を起こしそのエネルギーで輝く若い時期から始まる。次いでヘリウムなど重い元素を生成,最後の安定な鉄に至るまでそれらの生成物を燃やし続けて光り輝く。燃やすものがなくなり,最後は自らの重力を支えきれなくなって崩壊を起こす。この重力崩壊のときにニュートリノや光を大量に放出する。これが超新星だ。
こうした星の最期の様子は理論的には詳しく研究されていたが,小柴氏のニュートリノ検出によって初めて現実の観測データと照らし合わせられるようになった。宇宙から降り注ぐニュートリノで星の真の姿をとらえるニュートリノ天文学の始まりである。その後,世界でいくつか新しいニュートリノ観測装置も建設され,宇宙の謎のさらなる解明が始まっている。
著者
佐藤勝彦(さとう・かつひこ)
東京大学教授で理学部長・理学系研究科長,理学博士。1945年生まれ。超新星爆発のメカニズム解明に大きく貢献したほか,いち早く初期宇宙のインフレーション現象を指摘,宇宙論研究の指導的研究者として世界的に知られる。
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