日経サイエンス  2002年9月号

スター・ウォーズ エピソード2 映像に隠された先端科学

倉地紀子(科学ジャーナリスト)

 衣の裾を大きくひるがえしながら,空中を舞って激しく戦うヨーダ。体中の筋肉を本物の野獣のようにぶるぶると震わせて,主人公たちに襲い掛かる獰猛な戦闘モンスター———。日本で公開された映画『スター・ウォーズ エピソード2クローンの攻撃』のクライマックスシーンでは,最新のコンピューターグラフィックス(CG)技術がこれまでにない自然でダイナミックな映像を作り出している。『新たなる希望』(1977年),『帝国の逆襲』(1980年),『ジェダイの復讐』(1983年)という旧3部作に続いて,『スター・ウォーズ』の新3部作に取り組んだジョージ・ルーカス監督は,その第2作目で映像表現,特にCGを用いた表現に,最新の科学の成果を取り入れた。

 

 戦闘モンスターの筋肉の自然な動きは,外科医学などの分野で用いられる「筋肉シミュレーション」と呼ばれるCG技術を応用して初めて可能になったという。ビルや橋など土木・建築物の構造設計などに使われる有限要素法を基本に医療分野で使えるように高度化した技術である。また,エピソード2ではこれまで人形などを使って表現してきたヨーダをすべて3次元CGで描いたが,風をはらんでひるがえるヨーダの衣のいかにも自然な動きはクロスシミュレーションという手法を使った。布を細かな三角形に分けて,それらの各頂点をバネで結んだ力学モデルに置き換え,風や重力の影響も考慮しながら運動方程式を解くという方法だ。ほかにも群衆の動きや物が壊れていくときのリアルな映像など,『スター・ウォーズ』最新作は新しいCG技術の実験場になっている。

著者

倉地紀子(くらち・のりこ)

科学ジャーナリスト。新しいCG技術を雑誌などで解説・紹介している。映像制作で使われるCGを主に技術的な側面から解説するのを得意としている。

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