日経サイエンス  2002年9月号

エイズワクチン 実用化への期待とハードル

C.エゼル(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 エイズの感染を防いだり,発病を抑えるワクチンの研究は,HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の発見とほぼ同時に始まった。しかし,当初の予想をはずれ,21世紀に入った現在でも,エイズワクチンはまだ実現していない。

 

 米国では,現在大規模なエイズワクチンの臨床試験が行われており,今年末にはデータが出そろう見込みだが,効果に対する専門家の見方はきびしい。

 

 開発中のエイズワクチンには,HIVのエンベロープ(外皮)の糖タンパク質を使ったものと,コアタンパク質を使ったものがある。前者は液性免疫反応によって抗体をつくらせることを,後者は細胞性免疫反応を引き起こしてキラーT細胞を増やすことを目的にしている。エイズの場合,液性免疫だけでは効果がうすいため,両者を組み合わせたワクチンも研究されている。

 

 HIVにはいくつものサブタイプ(クレード)があるが,これが地域や国によって異なることも,ワクチン開発にとって厄介な問題になっている。クレードが免疫反応にとってどの程度重要かは不明だが,それぞれの地域のクレードに合わせたワクチンしか試験すべきではないとすれば,ワクチンの研究・開発はさらに困難になりそうだ。

原題名

Hope in a Vial(SCIENTIFIC AMERICAN June 2002)

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