日経サイエンス  2002年7月号

特集:プロテオミクス

生命科学を変える次の戦略

C. エゼル(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 ヒトゲノムがスポットライトを浴びる日はもうじき終わる。今,研究者の関心はプロテオームに向かっている。

 

 プロテオームは人間の細胞や組織が作り出すタンパク質の集合体だ。このタンパク質の全体像の解明をめざすのがプロテオミクスである。ゲノムは人体の遺伝情報のフルセットだが,そこにあるのはタンパク質を作る設計図にすぎない。細胞の骨組みも細胞の活動もタンパク質が支えている。

 

 身体にはさまざまな細胞があるが,その違いを生み出しているのもタンパク質だ。すべての細胞は基本的に同じゲノムを持っている。だが,どの遺伝子が活性化しているかは細胞によって異なるため,作られるタンパク質も違ってくる。さらに,同じ種類の細胞でも,病気になると,健康な状態では作らなかったタンパク質を生産することが多い。

 

 現在,企業や研究機関では,ヒトの全タンパク質の目録作りを進め,タンパク質間の相互作用を明らかにしようとしている。目標は,効果が高く,副作用が少ない薬を開発することだ。

原題名

Proteins Rule(SCIENTIFIC AMERICAN April 2002)