日経サイエンス  2002年7月号

時空のさざ波 重力波を追う

W.W. ギブス(SCIENTIFIC AMERICAN 編集部)

 アインシュタインがその存在を予言した重力波の初検出を目指して,超高精度の観測施設「LIGO」(重力波観測レーザー干渉計)が近く米国で本格稼働する。日本の「TAMA300」や欧州の同種施設も重力波を追跡する計画だ。宇宙の果てからやって来るかすかな信号をはたしてキャッチできるのか。

 

 アインシュタインの一般相対性理論によると,ブラックホールどうしの衝突といった大変動が宇宙で起きると,空間そのものの振動を引き起こす。これが重力波だ。ただし,地球に到達するまでに極めて微弱になってしまうため,周囲のノイズから区別して見つけ出すのは極めて難しい。初検出を目指して,超高感度の干渉計が世界で6基建設された。うち3つは米国にあるLIGO(ワシントン州ハンフォードに2基,ルイジアナ州リビングストンに1基)で,近く本格観測を始める。

 

 長さ4kmの2つの真空チューブをL字型に配置したような構造で,この中にレーザーを通して各辺の両端に置いたミラーの間の距離を精密に測る。重力波が到来するとミラーの間隔が数アトm(アトは1兆分の1のさらに100万分の1)変化するので,これをとらえる計画だ。ただし,最近の試運転では地表のわずかな震動などが邪魔になって,十分な精度を達成できなかった。

 

 重力波の検出に成功すれば,中性子星の誕生や死,ブラックホールの様子など,他の手段ではわからない宇宙の姿がとらえられる。いつの日か,科学を揺るがす発見が生まれるだろう。

著者

W. Wayt Gibbs

SCIENTIFIC AMERICAN誌シニアライター。

原題名

Ripples in Spacetime(SCIENTIFIC AMERICAN April 2002)

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